ひとり親家庭の支援拡充へ議論開始 自治体間格差の是正求める声

2023年0808 福祉新聞編集部

 こども家庭庁は7月28日、こども家庭審議会こどもの貧困対策・ひとり親家庭支援部会の初会合を開いた。部会長には新保幸男・神奈川県立保健福祉大教授が就任。今後、ひとり親家庭への支援拡充に向けて議論する予定で、会合では自治体間格差の是正を求める声が相次いだ。

 

 開会にあたり、小倉將信・こども政策担当大臣は「多様な支援ニーズを持つこどもについては、育ちを保証して可能性を十分に発揮できる環境を整備することが重要だ」と強調。今秋策定するこども大綱に向け、さまざまな声を聞く考えを示した。

 

 政府が2021年度に公表した調査によると、全国に母子世帯は119万5000世帯、父子世帯は14万9000世帯いる。平均年収は母子世帯が272万円、父子世帯が518万円。母子家庭の86%が働いているが、雇用形態は正職員が49%と半数を下回っているのが現状だ。

 

 こうしたひとり親家庭への支援について政府は(1)子育て・生活支援策(2)就業支援策(3)養育費確保策(4)経済的支援策――の4本柱を推進。6月に閣議決定したこども未来戦略方針では、ひとり親を雇い入れた企業への支援や、介護福祉士を目指す場合の給付金制度拡充なども盛り込んだ。

 

 会合で荒井惠一・全国母子生活支援施設協議会長は「DV被害者の保護だけでなく、地域の子育てを応援する社会資源として、国の施策を活用したい」と表明。また、母子施設の定員充足率が5割程度であるという現状には、措置主体である市町村による理解の格差があるとの考えを述べた。

 

 花田悦子・全国児童養護施設協議会児童養護編集委員長も「さまざまな制度やスキームがあるが、自治体の差が大きい」と指摘。支援の必要な家族には伴走的に切れ目なく支援できる仕組みが必要だとし、学校にスクールソーシャルワーカー(SSW)を必置化すべきとの考えを示した。

 

 山野則子・大阪公立大教授もSSWが広がっていないと問題視し「すべてのこどもを把握するのが学校だ」と強調。日本ソーシャルワーク教育学校連盟の調査を紹介し、こども分野の待遇改善を訴えた。

 

 同様に末冨芳・日本大教授も、常勤のSSWが足りないと指摘し「支援が届かないこどもや家庭をゼロにすべき」と語った。

 

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