「8020問題」解消へ 障害者高齢化で新施設(埼玉)

2023年0907 福祉新聞編集部
ところざわ学園の入所者が太鼓の演奏で開所式を盛り上げた

 社会福祉法人藤の実会(並木正芳理事長、埼玉県所沢市)は8月1日、障害者支援施設「ぷらす」(定員40人)の開所式を開いた。藤の実会が1987年に開設した障害者支援施設「ところざわ学園」(定員60人)で知的障害のある入所者の高齢化が進んだことから、高齢の入所者が「ぷらす」に移る。

 

 今後、ところざわ学園は20、30代を中心とした施設になる。これまでは動きがゆっくりの80代と、急に走りだしたりする20代が混在し、すれ違いざまにぶつかるなど不都合が生じていた。

 

 80代の親が50代の息子や娘の生活を支える「8050問題」にならえば、「8020問題」とも呼べる現象が全国の障害者支援施設でみられる。藤の実会は「ぷらす」の開設でその解消を目指す。

 

 相部屋が中心のところざわ学園に対し、「ぷらす」は全室個室。廊下の幅は車いすでもすれ違うことができるよう広くした。入所予定の男性(50代)は施設内を見てまわり、「ベッドがきれいだ」と頬を緩めた。

 

 「ぷらす」の本坂朗敬施設長によると、入所予定者の平均年齢は50歳。定員の6割はところざわ学園からの引っ越し組で、職員の8割はところざわ学園からの異動組という。

入所待機者1500人

 入所施設で暮らす障害者の高齢化は全国的な傾向で、厚生労働省は65歳を超えたら介護保険サービスの利用に移ることが原則だとする。

 

 障害者の入所施設については定員を減らすよう都道府県に促しているが、県によると県内の入所待機者は約1500人。入所者の高齢化や「親亡き後の安心」を求める声に押される形で「ぷらす」は開所した。

 

 開所式に参列した県の担当者は「国の補助金は削減傾向にあり、2022年度当初、埼玉県で国庫補助金交付が採択されたのは藤の実会のこの施設だけ。国からも期待が寄せられている施設だ」とあいさつした。

 

 本坂施設長は「ぷらすは災害時の福祉避難所の指定を受けた。施設内には地域の人との交流スペースもある。定員4人の短期入所は緊急の入所も受ける」と話し、地域に貢献しようと意気込んでいる。

 

 藤の実会=1961年11月、国立秩父学園親の会が財団法人秩父会館を設立。85年10月、財団法人を解散して社会福祉法人になり、現在は「ぷらす」を含め所沢市内で10の障害福祉サービス事業所を運営する。法人の職員数は約150人。

 

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