「社福の実態から乖離」全国社会福祉法人経営者協議会が財政審建議に見解

2023年0704 福祉新聞編集部

全国社会福祉法人経営者協議会(磯彰格会長)は6月23日、財政制度等審議会の建議「歴史的転機における財政」(5月29日)について社会福祉法人関連の記述に対する見解を示した。「現今の経営実態から乖離している」「経営実態をどのような視点で捉えているか不明」と指摘している。

 

建議の「介護事業の収益が安定して伸び、主に介護事業を運営する社会福祉法人は平均して費用の6カ月分前後の現預金、積立金などを保有している」との記述に対し、主に介護事業を運営する社会福祉法人の平均収支差率は1・6%、赤字法人は4割超(福祉医療機構、2021年度調査)であり、「収益が安定して伸びているわけではなく、極めて厳しい経営状況」と反論した。

 

また、最低限必要な運転資金2カ月分を除いた4カ月分で職員賞与の支給、法令で義務化されている建物、設備などの資産の保有をする社会福祉法人の経営実態を考慮すれば「現預金、積立金などが6カ月分では再生産コストが賄えない」と説明。社会福祉充実残額を保有する社会福祉法人は全体の9・1%にすぎないことも示した。

 

さらに建議では「事業規模が大きいほど収支差率が上昇する」としているが、「社会福祉法人の事業規模の拡大と収支差率の上昇に相関関係はない」と正した。「経営の協働化、大規模化は社会福祉法人などの経営基盤の強化や職員の処遇改善につながる」との記述に対しては、社会福祉法人は営利法人に比べて常勤介護職員の平均月給が約3万円高いデータ(厚生労働省、22年度介護従事者処遇状況等調査)を挙げた上で「営利法人に比べて離職率は低く、退出の少なさは地域の福祉、公益事業の安定と継続に寄与している証し」とした。

 

今回見解を示したことについて経営協は「社会福祉法人の実情を正しく発信し、建議が掲げる歴史的転機における社会福祉法人としての使命、存在意義を表明するもの」としている。

 

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