障害者施設が納豆日本一を継承 地域の人に好評、連日完売に

2022年0706 福祉新聞編集部
納豆が風邪をひかないように、冷房や換気扇を使わずに作業する

 さいたま市の社会福祉法人埼玉福祉事業協会(高橋清子理事長)が、3年前に閉店した地元の「松葉納豆」の味を受け継ぐ障害者支援施設「杉の子納豆製造所」を開所した。1997年の全国納豆鑑評会で最優秀賞に輝いた伝統の味を、後継者不在で引退した創業者の松嶋俊雄さん(91)から指導を受け、日本一の味を復活させた。 同市内で障害者関係12事業を運営する同協会は、利用者一人ひとりに合った日中活動の提供を目指し、製パン、製菓、貸しおしぼりなど多様な作業種目に取り組む一方、パティシエなどの職人を職業指導員として採用し、一般市場で評価される製品を製造している。

 

 2019年7月に松葉納豆が閉店することを知り、「引き継がせてほしい」と依頼した。20年以上施設の給食で食べていた納豆がなくなることを惜しむ多くの利用者の声が依頼を後押しした。

 

 場所探しに手間取り、開所は今年4月になったが、依頼を快諾した松嶋さんから製造機械や豆選びから、作り方など丁寧な指導を受け、5月には「日本一の時と同じ味」と松嶋さんが太鼓判を押す納豆を作れるまでになった。

 

 担当しているのは生活介護の利用者6人と職員2人。洗った北海道産大豆を水に漬け、蒸した後、納豆菌をかけ、パック詰めして発酵させる。

 

 製造量は1日900パック(2パック入り180円)。同協会の製品を販売するコンビニ「杉の子マート」など9店舗で販売しており、松葉納豆復活を知った地域の人が購入に訪れている。施設の給食分を除けば、毎日完売状態という。

 

 「パンや菓子は売れるまでに数年かかったが、納豆はすぐに売れた。多くのファンがいる松葉納豆のブランド力は本当にすごい。その味を受け継いでいきたい。今年は大豆の栽培も始めた。これを機に生産、加工、販売まで行う6次産業化を進めたい」と高橋理事長は話している。

 

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