手帳未所持者の難病患者 基準設け雇用率算定可能に〈厚労省案〉

2025年1029 福祉新聞編集部
障害者手帳を所持していない難病患者の雇用率制度の位置付けについて議論した

厚生労働省は3日、「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」(座長=山川隆一明治大教授)を開いた。障害者雇用率制度の対象外となっている障害者手帳を所持していない難病患者について、個別の就労困難性(職業生活への制限の程度)を判定する基準を設け、一定以上であれば、まずは実雇用率に算定できるようにすることを提案した。

障害者雇用促進法では、事業者に求められる雇用義務の対象は原則、手帳所持者に限っている。一方、障害者の定義は身体、知的、精神障害者に加え、そのほかの心身機能障害により職業生活が困難な人も含まれているため、本来は手帳を所持していない難病患者らも対象となり得る。ただ、難病患者の症状の有無や程度、進行度、治療状況などの個人差が大きく、就労困難性の判断が難しいため、かねて研究を行うよう指摘されていた。

高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査研究(2024年3月)によると、すべての難病患者を平均すれば必ずしも就労困難性が高いわけではなく、手帳未申請の人の75%、手帳を申請して不認定だった人の58%は就業していた。また、不認定だった人も、職業生活における制限が小さいとは言えないことも明らかになった。

厚労省の提案は、こうした状況を踏まえたもので、就労困難性の判定基準について公正一律かつ明確になるよう、さらに検討を重ねるとした。他の障害種別に影響がないよう施行日以後の採用者から実雇用率に算定できるようにし、その後の状況をみて雇用義務の対象にするかについて検討するとした。

委員からは具体的な就労困難性の判断基準が分からないとの指摘もあり、山川座長はイメージの分かる資料を提出するよう事務局に指示した。研究会は年末をめどに意見をまとめる。

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