桑葉ブランドを再興 障害者B型事業所が多彩な業務で工賃増〈フォーレスト八尾会・富山〉
2025年05月23日 福祉新聞編集部
流し踊りとして有名な「おわら風の盆」で知られる富山市八尾町の障害者就労継続支援B型事業所「おわらの里」(社会福祉法人フォーレスト八尾会)は、かつて町で栄えた養蚕業の桑の6次産業化に取り組み、ブランド価値の再構築を目指している。農園では200種類以上の食用花を栽培して販売するなど、ここ5年間で法人の売り上げも障害者の工賃も倍増している。
1997年設立の法人が桑に着目したのは2005年の平成の大合併がきっかけ。村上満理事長は「八尾町に根差す強みを考えた時に桑に行き着いた」と言う。
休耕地を再生し、現在、山間の約4100平方メートルの敷地で500本以上の桑を栽培している。6~9月に収穫し、選別、洗浄して約1週間乾燥させ、手作業で葉摘みし、粉砕する。桑葉茶、煎餅などの桑菓子、桑パウダーを製造販売している。
本格的な6次産業化とブランディング化に取り掛かったのは約10年前。在庫不良や採算性などの課題に直面した際、外部の人から助言を受けた。パッケージデザインを一新し、桑菓子や桑パウダーも改良。八尾町の歴史と伝統を継承するブランドストーリーを組み立て、行政、商工会など地域を巻き込み、SNSでPRもした。「売れる商品を作らないといけない。量では勝てない分、質を高めないといけない」と杉山久美子法人事業部長。
養蚕文化を知ってもらうため、桑の農作業体験や小学校で特別授業を行い、企業と協働して桑の剪定枝のチップとプラスチックを融合させた商品も開発した。
一方、事業所周辺の約1500平方メートルの農園では食用花やマイクロリーフなどの野菜を栽培し、レストランなどに販売している。漬物、惣菜、みそ、ジャムなどの食品や、正月のしめ縄、うちわなどの観光土産品の製造販売も行うなど多彩な業務を展開している。
事業所の定員は20人で職員9人の小規模法人だが、幅広い事業展開により24年の売り上げは約1660万円、平均工賃は3万500円まで増えた。杉山部長は「一つの事業だけでは法人が倒れてしまう。多くの事業があることが強み」だと言う。
最近では農林水産省と内閣官房が主催する「ディスカバー農山漁村の宝」の優秀賞を受賞するなど、取り組みが評価されている。法人では桑を古くて新しい地域資源として未来に紡ぎつつ、さらなる障害者の所得向上に取り組んでいく。