現役収入の5割維持 厚労省が公的年金の財政検証

2024年0714 福祉新聞編集部

厚生労働省は3日、公的年金の将来の見通しを示す財政検証結果を公表した。経済成長が現状に近い場合でも、2057年度の年金受給額は現役世代の手取り収入の5割を維持できるとした。一方、給付水準は現在よりも約2割目減りする。女性や高齢者の労働参加が進んだことで、19年の検証から水準はやや上がった。政府は今回の検証結果を踏まえて制度改革する方針で、25年の通常国会に関連法案を提出する。

武見敬三厚労大臣は5日の会見で「公的年金制度の持続可能性が確認された。今後の制度見直しでは、被用者保険の適用拡大などを通じた働き方に中立的な社会保障制度の構築、全国民に共通する基礎年金の給付水準の確保といった視点のもとで検討を進めることが特に重要だ」と話した。財政検証は5年に1度、年金財政の健全性を確認し、100年先までの見通しを点検するために行う。

24年度のモデル世帯(40年間平均的な収入で会社勤めした夫と専業主婦)の年金額は、厚生年金と国民基礎年金の合計で月22万6000円。現役の平均手取り月額は37万円で、この場合の所得代替率は61・2%だ。

これに対し、経済成長が現在並みと仮定した場合、年金の減額調整が終わる見込みの57年度のモデル世帯の年金額は月21万1000円。所得代替率は約2割低い50・4%になる。政府が目標とする所得代替率5割をかろうじて維持できる見通しだ。

男女別の受給額初推計

今回の検証では、初めて男女別1人当たりの平均年金額(月額)の見通しも公表した。夫婦共働き世帯が増えたことや家族構成の変化を踏まえた。

それによると、現在の65歳が受け取る年金は男性が14万9000円、女性が9万3000円。経済成長が現状並みだと、現在の30歳が65歳になる59年には男性が14万7000円、女性が10万7000円となり、男女差が縮小する。

ただし、今回の財政検証の前提は合計特殊出生率を1・36(70年時点)と見込んでおり、23年の1・20よりも高い。この見込みを下回れば、所得代替率などは下がる。

就職氷河期世代と呼ばれる現在の40~50代では、非正規雇用のため年金加入期間が短く、将来の受給額が低くなる人もいる。今後の制度改革では、こうした点に着目した議論が見通しとなる。