賃上げ実行と保険料抑制 医療、介護を効率化〈骨太の方針〉

2024年0702 福祉新聞編集部

 政府は6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2024」を閣議決定した。2030年度までの中期的な経済財政の枠組みのうち、医療・介護については「保険料の上昇を抑制することが極めて重要」と明記。現役世代の負担が重くならないようにし、消費の活性化につなげる。

 一方、当面の経済財政運営については、公的価格(診療報酬、介護報酬)に基づく賃上げを実行するとした。賃上げは保険料上昇の要因になり、本来は保険料の抑制と両立しにくい。政府はデジタル活用やリスキリング(学び直し)による労働生産性の向上により給付増を抑え、保険料の上昇抑制につなげたい考えだ。

 岸田文雄首相は同日の経済財政諮問会議で33年ぶりの高水準の賃上げに触れ「成長型の新しい経済ステージへと移行する千載一遇のチャンスを迎えた。経済・財政・社会保障を一体とした改革を進める」と述べた。

新たなステージ

 「新たなステージ」がキーワードで、それに向けた五つのビジョンの一つが「経済・財政・社会保障の持続可能性の確保」だ。30年以降は人口減少が本格化するとみて、医療・介護は労働力が不足するという前提に立つ。

 その上で、学び直しや予防・健康づくりに全世代で取り組み、医療・介護従事者の賃上げをしつつ給付増を抑える。DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI(人工知能)には投資を拡充する。

資格取得の条件緩和

 成長戦略として同日閣議決定した「新しい資本主義実行計画」も働く人の負担減を重視する。医療や介護の国家資格を取得する際、1人の職員が複数の資格を短期間で取得できるよう、履修科目などの条件を緩和する。

 また、同日閣議決定の「規制改革実施計画」は、介護保険の要介護認定の迅速化を掲げた。デジタルやAIを活用することで、認定事務を効率化する。今年度から検討し、26年度までに結論を出す。

 介護、保育、障害福祉分野の事業所の合併や事業譲渡を促す観点からは、それを阻む事務負担を減らす。