「新しい認知症観」記載へ 政府、基本計画案を議論

2024年0609 福祉新聞編集部
認知症本人の委員、藤田代表理事(左から2人目)と春原治子さん(左端)

政府の認知症施策推進関係者会議が5月30日に開かれ、1月に施行された認知症基本法で政府に策定が義務付けられている基本計画について議論した。事務局は基本計画の前文に「認知症とともに希望を持って生きるという新しい認知症観」を盛り込むことを提案。施策を立案・評価する際は認知症本人や家族の意見を聞き、政府の基本計画と地方自治体の計画が一体となって施策を進めることも記載する意向を示した。

基本計画に重点課題や達成目標を記載し、それに関連するKPI(目標の達成度合いを定量的に評価する指標)を設定することも提案。例えば「施策を立案・評価する際は認知症本人や家族の意見を聞く」という重点目標に対して、それを反映している自治体数を把握するとした。

ほかに基本計画の前文には、分野横断的な取り組み状況など地方自治体のプロセスや、地域資源を踏まえた多様な取り組みを重視することも盛り込むとした。

こうした事務局案について委員が意見を述べた。複数の委員が新しい認知症観に関して「分かりにくいので理解が深まるような説明が必要」と述べたのに対し、認知症本人の藤田和子委員(日本認知症本人ワーキンググループ代表理事)は「認知症を恐れ、ならないようにするのではなく、誰がなってもいい、なってからも希望を持って生きていける社会に変えていくための基本法だと思う」と応じた。

そのほか「KPIは数で示されて分かりやすいが、認知症の理解が進んでいるかなど中身が見えない」「計画の策定は小規模自治体では負担。介護保険事業計画で包含できるなど柔軟な対応をしてほしい」という発言や、若年認知症、認知症地域支援推進員に言及する意見もあった。

同会議は秋の基本計画策定に向けて今後も議論を詰めていく。