改正民法が成立、「共同親権」を導入 77年ぶりの転換

2024年0525 福祉新聞編集部
改正法案を採決する参院法務委員会(5月16日)

離婚した父母の共同親権導入を柱とした改正民法が17日、参院本会議で賛成多数により可決、成立した。1947年の民法改正以降の「離婚後は単独」という親権のあり方が77年ぶりに見直される。施行は公布から2年以内。法務省は改正の狙いを「子の利益のため」とするが、親権とこどもの利益がどう結びつくかは不明だ。すべての未成年のこどもに関係する親権制度は視界不良の中、大きな転換期を迎える。

改正法は、父母が離婚する際に単独親権か共同親権かを協議し、合意できなければ家庭裁判所が判断するというもの。一方の親によるDVや虐待のおそれがあると認めれば、家裁は単独親権と判断する。改正法施行前に離婚した父母も、共同親権への変更の申し立てができる。

単独行使は「例外」

婚姻中や離婚後に共同親権となった場合、親権は父母が共同行使することを原則としつつ、単独で行使できる例外規定を設けた。

これにより進学や転居、医療受診といったこどもの重要事項については、父母双方が決めることになる。例えば、一方の親が他方に断りなく子連れで転居することは、例外を除けば法的に認められなくなる。

立法事実はどこに

国会審議では、離婚後も父母が協力して子育てすることは現行制度でもできるのに、なぜ法改正が必要か(立法事実)が不明瞭だとする指摘が繰り返し浮上した。

法務省は、離婚後に共同で親権を持つことが「こどもと会えなかった親が会えるようになる」「養育費を払わなかった親が払うようになる」に直結はしないと説明。その半面、「親としての責任と自覚を促す効果がある」と期待を述べた。

親の収入を要件とした社会保障給付や奨学金が、法改正後、どのように運用されるかも不明だ。法務省は施行までに各省庁と連携して対応するとした。

父母の合意形成に時間がかかり、家裁に持ち込まれる案件が増えることも想定され、こどものストレスになるとの懸念も上がったが、法務省は「父母が熟慮することがこどもの利益につながる」と答弁した。

具体的な生活場面に落とし込んだ説明が乏しいことから、衆院では12項目、参院では15項目に及ぶ付帯決議が採択された。

こどもに伴走不可欠

元児童相談所長で、厚生労働省の元児童福祉専門官の坂井隆之・明星大特任教授の話

改正法の施行後は混乱が予想される。離婚後も父母双方が親権を持てば、多くの場合、こどもの進路や居所の選択、医療受診といった場面で合意形成に時間がかかる。教育や医療の関係機関は親権者を確認し、別居の親権者がいれば連絡を取って意向を確認しなければならない。

現在、社会的養護の施設入所児童の半分以上は保護者が1人だ。今後、新規入所で共同親権のケースが増えるだけでなく、入所時に保護者でなかった親が共同親権を申し立てることが可能となる。

双方の親権者がそれぞれ施設に要望を言ってくることも予想され家庭復帰を含むファミリーソーシャルワークは複雑になるだろう。

国会審議の結果、父母の「真意」を確認するよう修正されたが、こどもの真意こそ確認してほしい。こどもにとって非常に大きな影響のある法改正なのに、「こどもの意見表明権」は保障されなかった。

意見表明権を保障するには、こどもに適切な情報を提供するだけでなく、こどもの気持ちが言葉になるまで継続して伴走する第三者が不可欠だ。意見表明支援は社会的養護では制度化されるが、その手前にいる一般家庭のこどもに寄り添う体制づくりが急務である。

今回の法改正は親権制度の議論を超えて、こどもの人権を守るために社会がもっと家庭問題に関わる必要性を痛感させるものとなった。施行までの2年間になすべきことは多い。