〈共同親権〉父母の真意確認を検討 法案修正し衆院通過

2024年0424 福祉新聞編集部

離婚後の父母による共同親権を導入する民法改正案が16日、一部修正の末、衆議院本会議で賛成多数により可決した。与野党協議の結果、協議離婚で親権者を決める際、父母の力関係の差で不適切な合意とならないよう「政府は施行日までに、父母双方の真意を確認する措置を検討する」との規定を加えた。改正の影響を見通すのが難しいため、施行後5年をめどとした見直し規定も付則に盛り込んだ。

 

参議院での審議を経て成立すれば公布後2年以内に施行される。現在婚姻中の人、すでに離婚した人も含め、未成年のこどもを持つすべての人に関係する大きな改正だが、あいまいな点が少なくない。

税や福祉にも影響か

民法以外のさまざまな法律にも関わるため、12項目の付帯決議も採択した。その一つに「改正法の施行に伴い、税制、社会保障制度、社会福祉制度への影響がある場合は、関係府省庁が連携して対応すること」が入った。

 

改正案は父母の協議で共同親権か単独親権かを決めるとした上で、合意できない場合は家庭裁判所が「子の利益」の観点で決める。

 

修正事項の一つ「父母の真意を確認する措置を検討する」は、共同親権の意味を熟知せず、不本意な形で共同親権を選ぶケースを減らすのが狙い。

 

裏を返せば、法改正の意味を理解するのが難しいという判断がこの修正の背景にある。

単独行使の範囲不明

もう一つのポイントは、婚姻中や離婚後に共同親権を選んだ場合、親権は共同行使を原則とした点だ。その影響は多方面に及ぶため、法案審議で最も大きな論点になった。

 

改正案は、例外的に単独行使できる場合を「急迫の事情があるとき」「監護および教育に関する日常の行為」と規定。しかし、何が急迫や日常の行為かは不明瞭だ。

 

こうした例外に当たらなければ、共同行使が必須になる。そのため、例えば配偶者による心身の暴力から逃れようと子連れ別居したい親は、単独でこどもの居所を指定できず逃げにくくなる。

 

こどものパスポート取得、医療受診、携帯電話の契約といった場面で、一方の親が単独行使できるかという疑問も浮上。政府答弁は「法案成立後、検討する」といったものにとどまった。

 

そのため、与野党は修正事項として、「政府は急迫の事情の意義、監護および教育に関する日常の行為の意義を国民に周知する」を付則に加えた。

監護の分掌も認める

改正案は離婚後の子育てを担う監護者を誰にするか決めず、監護を分掌(分担)することも認める。単独行使できる「例外」の判断と同様、この点は第三者からみて分かりにくいという批判がある。

 

現在、保育所の入退所の手続きや児童扶養手当の支給は、親権の有無ではなく、監護の実態に着目して行われているが、改正後に監護者を決めないケースで、どのように判断するかは判然としない。

 

親のサインで契約が成立した後、もう一方の親が取り消したり、訴訟を起こしたりする懸念も第三者側にはある。そのため、第三者を保護する規定が必要だとの指摘もあったが、法務省は「現時点では必要ない」と退けた。