共同親権「多様性に対応した」大村部会長ら衆院で陳述
2024年04月13日 福祉新聞編集部離婚後共同親権の導入を柱とした民法改正案をめぐり、衆議院法務委員会は3日、参考人8人の意見を聴取した。法務大臣の諮問を受けて改正案要綱をまとめた法制審議会家族法制部会の大村敦志会長は「改正案は親子関係の多様性に対応できる見直しだ」と説明した。離婚後も父母双方が親権を持つことと、こどもの監護(養育)を父母が共同で行うことは別問題だが、両者を結びつけて改正案を肯定する意見と、改正案に慎重な意見が参考人から上がった。法律家の間でも親権の捉え方に隔たりがあった。8人のうち3人の意見の概要は次の通り。
慎重な運用を
大村敦志・学習院大学教授(法務省法制審議会家族法制部会長)
改正案は個々の親子が置かれた状況の多様性に対応できる形で見直しを行うものだ。離婚後に親権を共同行使するとしても、すべての事柄につき共同行使とするわけではなく、その対象となる事項、場面の設定には幅がある。つまり二者択一ではなく程度の問題だ。現行法の下でも離婚後に父母の一方が親権、他方が監護権を有することは可能であり、完全な単独行使ばかりではない。改正案はこうした制度をより柔軟に対応できるようにするものだが、当事者、裁判所にとって適切に運用するのが難しいところもある。特に裁判所は制度スタート時からしばらく運用には慎重を期していただきたい。
共同監護計画が肝要
北村晴男弁護士(民間法制審家族法制部会長)
わが国の離婚後単独親権制度は親子を不幸のどん底に突き落とす悪法だ。共同親権にするべきだが、今回の改正案は骨抜きだ。父母の一方が他の一方から暴力を受ける恐れがあるとき、裁判所は単独親権とせよという規定があるからだ。これは単独親権誘導条項とも言うべきものだ。離婚する夫婦がこどもの養育に関する取り決め(共同監護計画)を作成し、離婚届に添付することを義務付ける、これが真にこどもの利益を第一に置いた共同親権の肝だ。改正案にこの条項はない。痛恨の極みだ。私は当初、親権の問題と共同監護の問題は別だと考えていたが、親権があってこそ離婚後も親子が会える実態がある。
導入は危険だ
原田直子弁護士(法務省法制審家族法制部会委員)
現時点で共同親権の導入は危険だ。改正案は共同親権を選択しても、一方が単独で親権行使できる例外規定として「急迫の事情があるとき」を設けているが、「急迫」では狭すぎる。DV被害者が安全に逃げられず、こどもも危険にさらされる。諸外国では共同親権だと言われているが、親権ではなく親責任とか配慮義務が主流だ。親の権限は義務を遂行するために必要な範囲のものであるべきだ。親権という言葉は使わず、例えば、居所指定権とか、権限ごとに明確にすればよいのではないか。共同監護計画は今でも作ることができるし、やってほしい。こどもが父母から愛される実感を持つことは大事だが、共同親権にしないとできないかというと、それは別問題だ。