高齢者に多い基礎疾患〈高齢者のリハビリ 76回〉

2024年0126 福祉新聞編集部

高齢者の多くが付き合っている基礎疾患。基礎疾患は、厚生労働省から示されている疾患で、慢性の各臓器の疾患(呼吸器、高血圧を含む心臓病、腎臓病など)や、インスリンや内服薬で治療中の糖尿病、そのほか、BMI(体格指数)が30以上を満たす肥満の人も含まれます。高齢になると一人でいくつもの基礎疾患を抱えてしまうことにもなり、内服の種類も増えてきます。基礎疾患は完治できないことが多いので、生活する中でうまく付き合っていかねばなりません。

 

私は集中治療室に勤務しています。ここではさまざまな疾患の患者が治療を行いますが、患者の多くに高血圧症がみられます。特に高血圧が原因と思われる脳梗塞や脳出血の患者は後を絶ちません。

高血圧について

高血圧とリハビリについて話します。

 

高血圧は、収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。高血圧の原因は食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスや、遺伝的体質などが組み合わさって起こると考えられています。特に日本人は塩分摂取量が多く、これに比例して高血圧患者も多いと言われています。

 

リハビリ中の血圧変動について 血圧を構成する要素は大きく分けて(1)心臓のポンプ機能(2)循環血液量(3)自律神経調節で、これらが密接に関与しています。リハビリを行う際、活動の状況により血圧の変動が上昇する場合もあれば、低下する場合もあります。

 

また、降圧剤の服用後に血圧低下に伴うふらつきの症状が出現することもあります。そのほか、急に立ったりすることで一時的に脳への血液循環が減少することによって起こる起立性低血圧やめまい、一時的な意識消失などの症状が出現します。リハビリ時はふらつきやめまいなど症状がないか確認をしながら介入していきましょう。

 

逆に持続する高血圧は血管に負担がかかり、動脈硬化の原因となります。動脈硬化となってしまうと、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞の発症につながります。リハビリをする際は、日ごろから血圧コントロールが行えているか継続的な観察と、症状が出現した際の早期の対応が必要となります。

生活リズムを整える

リハビリというと専門性の高い印象があると思いますが、日常生活の中で継続できる工夫が必要です。身近にできるレクリエーション活動を定期的に行うことも有効です。楽しみながら身体を動かすことで身体的・精神的なリフレッシュが得られ、日常の生活リズムを整えることにもつながります。楽しみながら行う運動を続けることで、血流の改善や腸の働きも良くなり食欲がわいてきます。

 

基礎疾患と上手に付き合いながら、楽しく笑顔で生活できる環境を整えていけるといいですね。

 

筆者=中川さつき 新久喜総合病院 クリティカルケア認定看護師

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長