滑り座りの原因と対策〈高齢者のリハビリ〉

2023年0714 福祉新聞編集部

 入院中の患者は、心身機能の低下によってベッド上で過ごす時間が長くなっている場合があります。そのため、寝たきり防止や活動、参加を促す目的のために、部屋やデイルームなどで車いすに座って過ごす時間を増やすことがあります。

 

 快適に車いすで過ごすことができる患者がいる一方で、落ち着かないために車いす安全帯(Y字型ベルト)を使用したり、滑り座り(仙骨座り)になっている場合に、滑り座りをやめようとして滑り止めマットを敷いたりしているケースがあります。ただ、安易に滑り止めマットを敷くことは、お尻の引きつれを起こし、褥瘡の原因となる可能性があるために推奨されていません。

 

滑り座り(仙骨座り)

 

 滑り座りは、お尻がいすの座面の奥に着かず、背中を背もたれに押し付け、前方向へ「ずれ」の力が働くことによって生じます。さらに、背中やお尻の圧迫による痛みから逃れようとするために余計に前にずれてしまい、車いすから滑り落ちてしまうことがあります。褥瘡の原因となるほか、手の動きが制限されて食事動作がうまくできない、背中が変形するなどの悪影響もあります。座って過ごすことで患者さんが心身に苦痛を感じることは避けたいものです。

 

 今回、滑り座りの原因と対策を紹介します。

 

 原因は(1)車いすの座面の奥行きが長すぎる、座面が高すぎるなど、患者の体と車いすの大きさの不適合(2)股関節が曲がりにくくなっている、大腿の裏の筋肉が縮んでいるなど、患者の体の状態と車いすの不適合(3)患者の座位を保つ力と車いすの種類の不適合、などが考えられます。

 

 対策は(1)患者の体の大きさに合った車いすを準備する(2)車いすを標準型車いすからモジュラー型車いすへ変更するなど、患者個々の状態に合わせて調整を行う(3)座位を保つ力が不足している場合はティルト・リクライニング型車いすを選択するなどが考えられます。

 

 また、本来車いすは移動の手段であり、座るための十分な機能を備えていないため、車いすではなく普通のいすで過ごすことができないか検討することも必要です。

 

 座位保持が低下した人を、いすなどに快適に座ることができるよう支援するケアの手法として、シーティングがあります。シーティングについて、「どのような車いすを選び、どのように調整したらいいのか分からない」という声が出ることがあります。当院では、研修を受けたシーティング委員会のリハビリスタッフが車いすの種類の選定と調整を行い、難渋ケースに対しては施設外の車いすの販売・メンテナンス業者とシーティングクリニックを行います。また、病棟では看護・介護スタッフが患者の生活上での座位や活動を観察し、リハビリスタッフと情報交換します。

 

 快適なシーティングを行うことで活動と参加につなげ、患者が笑顔を取り戻し、最終的には「生活の質(QOL)の向上」につながることを望みます。

 

筆者=力丸泰山 赤羽リハビリテーション病院 

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長

 

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