介護分野に「特定最低賃金」導入を検討 福岡厚労大臣が表明
2025年03月29日 福祉新聞編集部
福岡資麿厚生労働大臣は3月21日の閣議後会見で、介護分野などにおける「特定最低賃金」の導入について、検討する考えを示した。介護分野の処遇改善は喫緊の課題だと指摘。まずは実態把握から行うという。
特定最賃は都道府県ごとに産業や職業別で設定するもの。地域別の最賃よりも高い水準にしなければならない。関係労使の申し出に基づき、最賃審議会の議論を踏まえて厚労省が決める。
2024年3月末時点で適用されている労働者は283万人。現状では「製造業」や「鉄鋼業」「小売業」などが多い。
現行制度上、特定最賃の新設には、同じ分野の労働者が2分の1以上労働組合に加入し、協定を結ぶことなどの要件がある。「介護労働者は組合加入率が低いことなどから、これまで特定最賃が適用された地域はない」(厚労省労働基準局賃金課)という。
同日の会見で福岡大臣は、賃上げで先行する他産業と、人材の引き合いとなっている介護分野の処遇改善は、引き続き喫緊の課題だと強調。政府としては補正予算による賃上げ支援などが現場に届くよう取り組む姿勢を示した。その上で特定最賃の活用は、労使の意見や実態について再度確認して検討すると語った。
首相「政治判断」
会見に先立つ3月17日の参議院予算委員会で、野党から介護分野などにおける特定最賃の導入について質問があり、石破茂首相が政治主導で判断する考えを示す場面があった。
国民民主党の田村麻美議員は、介護などの分野における人手不足の現状を踏まえて特定最賃の仕組みを活用することで、政府が掲げる最賃1500円の実現を目指すべきと提案。具体的に今年の「骨太の方針」に盛り込むよう訴えた。
これに対して石破首相は特定最賃が労使のイニシアチブに基づく制度であるとして「政府が利用促進の旗を振るのは慎重であるべきだ」と答弁した。
ただ「賃金が上がらないとこの国の経済は持たないという認識を強く持っている」と述べ、制度の趣旨をきちんと果たしているかを検討し、政治主導で判断する考えを示した。
自公も一致
自民党の森山裕幹事長と公明党の西田実仁幹事長は3月18日に都内で会談し、介護分野などへの特定最賃導入を検討することで一致した。会談後に森山幹事長は「職業意識だけでやれる話ではない」との認識を示した。