障害者支援施設の支出管理
2025年03月23日 福祉新聞編集部
1.指定障害者支援施設の支出に関する基本的考え方
2006年10月1日から障害者自立支援法が本格実施され、障害者支援施設においては支援費から障害者自立支援法に基づく新たな事業体系に移行されることに伴い、「障害者自立支援法の施行に伴う移行時積立金等の取り扱いについて」が出され、支出対象経費等、障害者支援施設における支出に関する基本的考え方が定められている。
2.支出対象経費
自立支援給付費を主たる財源とする施設の運営に要する経費など資金の使途については、原則として制限が設けられていない。ただし、次の支出に充てることはできないと定められている。①収益事業に要する経費②当該指定障害者支援施設を経営する社会福祉法人外ヘの資金の流出(貸し付けを含む)に属する経費③高額または多額な役員報酬など実質的な剰余金の配当と認められる経費。
3.複数年度での財務運営施設整備費等財源
自立支援給付費を単年度で使い切らず複数年度において運営することについては、積立金および繰越金として次のように認められている。
(1)積立金および積立預金
自立支援給付費の積立金の支出対象については、通知では触れられていないが、経費など資金の使途については、原則として制限が設けられていないことから、積立資産の種類および限度額に制限は設けられていない。
(2)繰り越し金
各会計年度における事業活動収支および資金収支は、長期的かつ継続的な事業運営の確保に留意しつつ、収入、支出の均衡を図り、当該指定障害者支援施設の健全な運営に必要な額以上の収支差額を生じないようにすること、とされるが、措置施設と異なり繰り越し金の限度額についての定めはない。
4.法人運営という視点での繰り入れ・繰り替え使用
法人運営という視点では自立支援給付費を当該施設の運営費などに使用するほか、同一法人が運営する他の事業に繰り入れ、あるいは繰り替えて使用することが次のように認められている。
(1)資金の繰り入れ
①当該法人が行う他の社会福祉事業または公益事業への繰り入れについては、健全な施設運営を確保する観点から、当該指定介護老人福祉施設の経常活動資金収支差額に資金残高が生じ、かつ、当期資金収支差額合計に資金不足が生じない範囲内において、資金を繰り入れても差し支えない、とされる。
②当該法人が行う当該指定障害支援施設以外の指定障害者支援施設等への事業資金の繰り入れについては、当期末支払資金残高に資金不足が生じない範囲内において、資金を繰り入れても差し支えない、とされる。
(2)資金の繰り替え使用
同一法人が運営する他の事業に一時的に資金を貸し付け(繰り替え)て使用することも次のように認められている。他の社会福祉事業等または公益事業もしくは収益事業ヘ一時繰り替え使用する場合は当該年度内に補てんしなければならない。
5.指定障害児入所施設等における取り扱い
06年10月1日から障害者自立支援法の本格実施に伴い、障害児施設においては契約制度と措置制度の二制度が併存する。障害児入所給付費および障害児通所給付費については自立支援給付費の支出に関するルールが適用される。
一方、障害児入所措置費については引き続き「社会福祉法人が経営する社会福祉施設における運営費の運用及び指導について」に基づき行われるとされ、その内容は本連載第3回(2月11日号)で記載した措置費の支出に関するルールと同様で、借入金償還財源、積立資産の種類および繰り越し金限度額に一定の制限がある。
このように、障害児施設においては、障害児入所給付費と障害児入所措置費により支出管理のルールが異なるため、収入別に会計処理をしなければならないか疑問が生じる。この点については、必ずしも収入別に会計処理する必要はないとされ、支出を措置児童と契約児童の月初日の人数比で案分することで足りる。
6.障害者福祉施設の施設整備補助事業制度
地方自治体が策定する整備計画が着実に実施されるよう障害者の障害福祉サービス等の基盤整備を図るため、障害者福祉施設の創設、増築、改築及び大規模修繕等の支出に対し、国1/2、都道府県・指定都市・中核市1/4の施設整備補助がある。設置者の負担は1/4とされ、整備時には施設整備積立金の取り崩し、償還時には自立支援給付費がそれぞれ対応可能な財源となる。