介護老人福祉施設の収入構造

2025年0221 福祉新聞編集部

(1)保険給付と自己負担

介護報酬の収入構造の説明として介護老人福祉施設を取り上げる。介護老人福祉施設は、老人福祉法に規定する特別養護老人ホームのうち入所定員が30人以上のもので、2000年に介護老人福祉施設サービスの対価が措置費から介護報酬へと移行した。介護報酬の基本単位等は「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(厚生省告示)として示されている。介護保険給付を提供した場合の収入は①介護保険給付の介護報酬②利用者の自己負担である。

(2)介護保険給付に関する介護報酬の構造

介護保険給付に関する介護報酬の全体像を把握するためには、緻密ちみつかつ詳細に定められた介護報酬単価の膨大な資料、告示を読み込む必要がある。社会保険研究所が発刊している「介護報酬の解釈」は3分冊にわたるが、よくまとめられ理解しやすく、そこで示されている「介護老人福祉施設における介護報酬の算定構造」を参考にまとめるとの通りである。

 

 

介護報酬単位の算定構造は基本部分マイナス減算プラス加算であり、基本部分に影響を与えるものは4項目ある。

①介護福祉施設かユニット型介護福祉施設か

②介護福祉施設サービスか経過的小規模介護福祉施設サービスか

③個室か多床室か

④要介護度

(3)介護老人福祉施設かユニット型介護老人福祉施設か

ユニット型とは、10人前後の少人数グループごとに、個性や生活のリズムを保つための個室と、ほかの利用者や地域との関係を築くためのリビングやパブリックスペースを一つの「ユニット」として運営する介護老人福祉施設などである。従来型の介護老人福祉施設とユニット型介護老人福祉施設とは①個室か多床室か②職員のシフトがユニット単位か施設単位かなどが主な違いである。従来型の介護老人福祉施設よりユニット型介護老人福祉施設の報酬単価が高く設定されている。

(4)介護福祉施設サービスか経過的小規模介護福祉施設サービスか

経過的小規模介護福祉施設とは18年3月31日までに指定を受けた入所定員が30人の指定介護老人福祉施設をいい、離島または過疎地域において所在する。介護福祉施設サービスより経過的介護福祉施設サービスの報酬単価が高く設定されている。

(5)個室か多床室か

従来型介護福祉施設とユニット型介護福祉施設の主な違いは多床室か個室かであるが、従来型介護福祉施設においても従来型個室がある。従来型個室の場合には多床室と報酬単価の違いはない。ユニット型介護福祉施設においてもユニット型個室的多床室があるが、個室と報酬単価の違いはない。つまり、従来型介護福祉施設における個室か多床室か、ユニット型介護福祉施設における個室か個室的多床室かによる報酬単価の違いはない。

(6)要介護

要介護状態は1から5に区分され、介護給付サービスの対象とされ、それぞれに支給限度基準が定められている。介護報酬単位×サービス提供量が支給限度基準を超過した場合、在宅サービスでは全額自己負担となる。要介護とは別途、要支援の場合には予防給付サービスとされる。一定の要介護度ごとに介護報酬単位の差分をまとめると、介護福祉施設かユニット型介護福祉施設サービスか、経過的小規模か否かそれぞれの区分ごとに要介護度が一つ上がるごとに1日当たり70単位前後の差分が見てとれる。

(7)自己負担

①介護老人福祉施設の利用者は区分支給限度基準額の対象外とされ、介護保険給付の対象となる介護サービス費用の自己負担額は、所得水準により1割、2割、3割の「定」額となる点が、在宅サービスとの違いである。

②居住費(光熱水費含む)、食費(調理費含む)は介護保険の給付対象外とされ、全額自己負担となる。居住費、食費は施設との契約により価格が決められるが、適正な徴収額に資するために「居住、滞在及び宿泊並びに食事の提供に係る利用料等に関する指針」が厚生労働省告示として出されている。