介護の効率化サポート 眠りSCAN、7000施設に広がる(パラマウントベッド)

2025年0206 福祉新聞編集部
「介護の可視化を」と田中主任

マットレスの下に敷けば利用者の覚醒や離床などの状態がモニターで分かる「眠りSCAN」を用いた見守り支援システム。導入する介護施設がここ数年で飛躍的に伸びているという。開発したパラマウントベッド社は看護師資格を持つスタッフを必要に応じて派遣。介護施設の業務改善も含めたきめ細かな提案まで行う。

眠りSCANは78×24センチのシート。マットレスの下に敷くだけで、独自に開発したセンサーが利用者の体動を検出する。厚みも1・5センチほどで弾力性があり、使用しているのを感じにくいのも特長だ。

具体的には睡眠や覚醒、離床の状態が分かるほか、呼吸や心拍数も推計で表記。利用者ごとの情報は専用サーバーに集約し、睡眠の状況などを医療機関に提供することもできる。

電極やデバイスなど何も身につけなくても、さまざまな情報をリアルタイムで取得できるのが最大の強みだ。1台当たりの費用はレンタルだと月2000円程度になる。

寄り添った設計

開発したのは同社が2009年に立ち上げたパラマウントベッド睡眠研究所という専門部署だ。理工学系を専攻したメンバーや看護師資格を持つスタッフ13人が在籍する。

当初は高齢者施設の利用者だけをターゲットにしていたわけではなかった。商業ドライバーの睡眠管理を行う機器として導入されたこともある。

しかし、16年度に厚生労働省が介護ロボットに関する補助金を創設したことが追い風になったという。

20年度からは大手介護事業者も含めて導入が相次ぎ、24年3月時点の年間販売は4万3000台に上った。累計だと18万7000台で、導入したのは約7000施設に上る。

これほど広がった理由について同社介護デジタル事業課の田中寛之主任は「設置や運用で複雑な操作が必要なく、日々の業務が大幅に減るからではないか。ユーザーに寄り添った設計にこだわるのも弊社のDNAの一つ」と話す。

見守り支援システムは施設のニーズに応じて、設定した心拍数になると通知する機能や、利用者の状況を映像で確認できるようカメラを追加できる。また、モニターのイラストや色などは分かりやすいデザインを追求している。

導入する際には、同研究所に所属する看護師が有償で施設に伴走支援をすることも可能だ。オペレーションが大幅に変わる場合は、製品説明だけではなく、日々の業務改善の提案まで行う。

同社は1947年、病院用ベッドの専業メーカーとして創業。その後、高齢者施設や在宅介護分野にも広げ、さまざまな製品を開発してきた。現在は中国やインドなどにも拠点を置いている。

今後は利用者の体重や室内の湿度なども含めさまざまな情報を記録できるような製品開発を進める考え。AI(人工知能)も取り入れ、さらに精度を高めていくという。また、昨年10月には利用者の排せつ内容をプライバシーに配慮しながら自動で記録するシステムの事業を買収した。データは睡眠の情報と同様に一元管理できるよう開発を進めている。

田中主任は「テクノロジーを用いて、これまで現場の経験に頼りがちだった介護業務の可視化と効率化をサポートしていきたい」と話している。