看取り率先して対応 高卒4年目で年収440万円(あかね会、茨城)

2024年0927 福祉新聞編集部
認知症通所介護を利用するケアハウス入居者と談笑する荒川理事長(左)

茨城県北茨城市。JR常磐線の大津港駅前の5階建て建物がひと際目立つ。社会福祉法人あかね会(荒川透理事長)の軽費老人ホーム「ケアハウスマイホーム五浦」だ。東日本大震災時は津波を恐れて避難してきた住民や電車の乗客ら数十人を受け入れた。

利便性の高いこの場所で1997年の法人設立時に開設したケアハウスのほか、特別養護老人ホーム、通所介護、訪問介護、企業主導型保育などを運営。赤ちゃんから高齢者まで地域の福祉拠点としての役割を担っている。

ケアハウスは介護保険の事業所指定を受けずに地域の訪問看護、在宅医療などと連携して看み取とりまで対応しており、全国的にも珍しい。その経験を生かし、2017年開設の特養「あかねサクラ館」は看護師を手厚く配置し、看取りのほか、経管栄養、透析など医療ニーズの高い利用者を率先して受け入れている。

職員は当初消極的だったが、「我々は利用者を選ぶのではなく利用者に選ばれる側」(荒川理事長)と理解を促した。少しずつ実績を重ね、これまでに法人では計24人の利用者を看取った。

一方、働きやすい職場づくりも進めてきた。介護職員を基準の1・4倍多く配置し、早くから記録用タブレットを導入、月平均の残業は1時間もない。保育所に0歳からこどもを預けて安心して働ける。給与も高卒4年目の年収は440万円と高水準だ。

採用面では新卒や介護経験のない人を雇用する。荒川理事長の前職はタクシー会社社長で、運転手が転職を繰り返すことを目の当たりにしていたため、「法人で育てていけば辞めずに定着してくれる」との考えがある。

荒川理事長は毎朝5時半に施設内を回るのが日課。全97人の職員と年2回面談してコミュニケーションをとっている。6月には全国軽費老人ホーム協議会の理事長に就任。「入居者同士が助け合って暮らす同ホームの良さを広めたい」と意気込んでいる。