障害者施設が地域の人気商品開発 ふるさと納税返礼品にも(神奈川)

2024年0614 福祉新聞編集部
工房で作られた商品の数々

神奈川県平塚市の社会福祉法人進和学園(出縄守英理事長)は「本人中心」を根本精神として、さまざまな事業を展開している。本田技研工業と連携した自動車部品組み立て事業では高工賃を実現するとともに、約半世紀にわたって強い信頼を受けた受注が続いている。徹底した品質管理のノウハウと精神はパン・菓子製造、食品加工などの事業展開にも受け継がれ、今や平塚市名物となった「湘南みかんぱん」や「とまとジュース」は県内外のイベント販売などでもすぐに売り切れるほど人気を博している。

本田の自動車部品製造受注を進和職業センターから引き継いで福祉工場として2006年に発足した「しんわルネッサンス」。そこに14年、農林水産省6次産業総合化事業の助成を受けて「湘南とまと工房」が併設された。農産物生産に加工や販売などを通して付加価値をつけようと、神奈川県、平塚市、地元JA、農業者らとネットワークをつくり、規格外となってしまった農産物などを使い清涼飲料、ジャム、ドレッシングソースなどに加工、販売する。法人の理念「(本人、地域、ボランティア、家族など)七つの輪が一つの和になりますように」が実現された結晶とも呼べる製品が誕生した。それがこだわりのとまとジュースだ。酸味、甘味、うま味を最大限に引き出し、1本1本手作りで心を込めて丁寧に仕上げた。味にも絶対の自信を持ち、23年度(第64回)全国推奨観光土産品審査会(日本商工会議所、全国観光土産品連盟主催)で農林水産大臣賞を受賞した。

実はこのトマトの兄弟分ともいえるパンが法人にある。「サンメッセしんわ」で作る湘南みかんぱんだ。従来から食パン製造などを手掛けていたが、地産地消をテーマに青摘みミカンの果汁を絞ってパン生地やあんに練り込み焼き上げた。第4回全国逸品セレクションで準グランプリ受賞をはじめさまざまな賞を受賞、「平塚市ふるさと納税返礼品」、とまとジュースとともに「湘南ひらつか名産品」にもなっている。

出縄理事長は「理念の〝本人中心〟の本人とは、関わる自分たち自身のことでもあり、共感し共に生き、あらゆる絆で本人を支えていく強い覚悟を込めています」と語る。

同市内にある高麗山公園(湘南平)内に法人が運営する常設販売店兼喫茶「ともしびショップ湘南平・リトルツリー」は、ホットケーキやお替り自由のコーヒーもおいしく、訪れる人の癒やしの快適空間になっている。


社会福祉法人進和学園 1958年6月、平塚市に進和学園(知的障害児入所施設)を開設、翌年に法人認可。現在、障害者支援として入所施設3カ所、グループホーム11カ所を持ち、9事業所で21事業、ほかに福祉の店1カ所、総合相談支援窓口1カ所、子育て支援では保育所3カ所、学童保育を2地区(4カ所)で運営、放課後デイサービス事業、子育て支援拠点事業を展開している。在籍利用者は約1000人、ほかに相談支援登録者1350人、子育て支援登録者680人、放課後デイ登録者120人。職員数は412人。地元のFMラジオを通じての情報発信や「いのちの森づくり」活動にも取り組んでいる。