刑余者支援で再犯防止 兵庫県尼崎市など関係機関が社会復帰の協定

2024年0514 福祉新聞編集部
神戸保護観察所尼崎駐在官事務所で開かれた再犯防止を考える連携会議

兵庫県尼崎市は、刑務所などの矯正施設から出所する人たちに対して社会復帰に向けた支援を漏れなく提供するため、1月に神戸保護観察所、市保護司会と連携協定を締結した。市の担当者らは出所前から受刑者と面談し、福祉サービスにつなげるなど、シームレスな支援に取り組んでいる。市社会福祉協議会も、地域ぐるみの支援につなげて成果を上げている。

「協定を結んだことで、保護観察所や保護司との情報共有がしやすくなり、これまで以上に早期の支援が期待できるようになった」

尼崎市重層的支援推進担当課の高橋健二課長は、こう話した。そして「各機関が、何ができるかという情報を、あらかじめ共有できることにはとても意義がある」と続けた。

刑法犯罪者は2002年度をピークに減り始めているが、再犯者は増加。刑法犯罪者の半分が再犯者となっているが、その多くが住む所のない高齢者や福祉サービスが必要な障害者になっている。

このため、政府は16年度に再犯防止法を施行し、自治体の責務として再犯防止への取り組みを要請。尼崎市では22年3月に再犯防止推進計画を策定。福祉サービスが必要な出所者ら、複雑・複合化した課題を抱える相談者への包括的な支援体制づくりを進める、重層的支援推進担当課を翌4月に設けた。

神戸保護観察所、市保護司会、市社協などとの連携会議は、その後、2カ月に1回開催し、それぞれの取り組みの共有や事例検討をし、シームレスな支援体制を検討している。その中で、保護観察所から提供された事例について、市の担当者らが観察所を訪れ、ビデオ通話システムを使って出所予定の受刑者と面談するなど、支援を進めてきた。

こうした司法関係機関との連携により、住む所がない出所者らの住居確保のほか、障害があるにもかかわらず障害者手帳を持っていなかった人には、すぐに手帳を交付するなどして生活基盤を確保するようになった。

連携協定の締結は、「連携会議を開く中で、関係者間で必要性を認識した司法と福祉の連携」を、より強固にするためだった。

3月15日に神戸保護観察所尼崎駐在官事務所で開かれた連携会議には、大阪矯正管区更生支援企画課や神戸地検刑事部再犯防止担当、矯正施設を退所した高齢者らの支援を行っている県地域生活定着支援センター「ウイズ」(神戸市中央区、社会福祉法人みつみ福祉会が運営)などからも責任者らが参加。精神病を患っているのに入院を拒む上、福祉施設での集団生活にもなじめない可能性が高い出所予定者を想定し、何ができるかなどを話し合った。

大阪矯正管区の担当者からは「刑務所には犯罪に応じた再犯防止プログラムがあり、プログラムを受けた結果、更生保護施設で受け入れられた出所者もいる」などと説明。各機関でも何ができるかを伝え合った。

また、高橋課長と同じ市役所のフロアで働く市社協の重層的支援推進グループの太田雅之さんは「自立支援が再犯防止につながるケースもある。制度のはざまで孤立する人々を地域の力でなくしていき、再犯防止につなげられれば」と話している。