経営権売買事件を受け、社会福祉法人の不正に注意喚起(厚労省)

2024年0515 福祉新聞編集部

厚生労働省は4月16日、社会福祉法人の不正事案について注意喚起する事務連絡を自治体に出した。本来存在しない社会福祉法人の経営権が売買された後に資金が流出した事件を受けたもので、理事長選任に関する金銭の受け渡しと損害賠償責任、刑事責任の関係を例示した。

社会福祉法では評議員や理事、監事、会計監査人は法人に対して善管注意義務(一般的に要求される程度の注意を払う)、さらに理事は忠実義務(委託を受けた職務を忠実に行う)があることが定められている。これらに違反して法人や第三者に損害を生じさせた場合、賠償責任を負う可能性がある。例えば、理事が特定の人物を理事長に選任する見返りに金銭を受け取るなどして法人などに損害が生じた場合、その理事は損害賠償責任を負うことがある。

また、評議員や理事、監事、会計監査人が不正の請託(権力などがある人に私事を頼む)により利益を受けたり、そうした要求や約束をしたりすることは罰則対象となる。利益を与えたり、申し出たりする人も同様。例えば、理事長や理事の選任について法令違反の方法による依頼を受け、金銭を受け取ることは刑事責任に問われる可能性がある。

事件では、法人の創始者と後任理事長の公認会計士が共謀して法人の経営権の売買や資金を着服したとして罪に問われ、昨年9月、東京地裁で有罪判決が言い渡されている。