新春インタビュー 阿部英一・東松島市社協会長 震災被害者支援に注力

2024年0113 福祉新聞編集部
阿部英一・東松島市社協会長

東日本大震災(2011年)で、農地や漁港をはじめとする産業・社会基盤施設に壊滅的な被害が発生しました。

 

行政としては、発災直後から人命救助と行方不明者捜索を最優先に進め、各避難所の設置、医療衛生対策、ライフラインの確保、復旧、膨大な震災廃棄物の処理、仮設住宅の供給などの応急対策に尽力しました。

 

社協としては、特別財政支援、いわゆる総合交付金事業をベースにして、市からの委託で被災者支援事業を展開してきました。

 

被災者生活支援、復興福祉のまちづくり、生活再建、多様性の配慮、地域福祉活動の担い手づくり、地域福祉推進基盤の整備という六つの分野を目標設定し、切れ目のない支援を継続しています。

 

震災に端を発する課題であっても地域生活課題と捉え、地域福祉推進に関連する業務を積極的に受託。その過程で福祉専門職を増員するなどして、震災後の地域福祉事業の充実を図っています。

 

ハード面の整備がほぼ完了した現在、復興フェーズ(段階)は第2期に入っています。これまでの被災者支援の経験を生かしながら、公営住宅や、移転地で暮らす人の心のケアやコミュニティーの再生、新たなコミュニティーづくりに、全職員が一丸で取り組んでいます。

 

そんな中で、新型コロナウイルスの流行が始まりました。コロナ禍での特例貸付のうち、緊急小口総件数と総合支援資金件数(延長、再貸付含む)を合わせると、全部で418件、総額1億3353万円に上りました。

 

震災時にも特例貸付を実施しています。後で分かったことですが、震災とコロナ禍での特例貸付をどちらも長期滞納している人が21人いました。

 

ギリギリの生活をされていた人が、きっかけ一つで生活困窮に陥ったのだと考えられます。金銭面の把握は、社協職員はもちろん、民生委員であっても、表立って聞くわけにもいかず、非常にデリケートな問題です。

 

社協では、フードバンク・フードパントリーを実施していますが、コロナ禍に入って食品提供回数が増えました。受け取りの際、生活相談を受けることで、少しでも日常生活の課題解決や関係機関につなぐことができればと考えています。

 

地域福祉課題の一つに居場所づくりが挙げられます。昨年2月に地元の子育てサークルと連携して集まれる場所の提供を初めて実施しました。場所や人員配置の関係で定期的な実施には至っていませんが、親子の問題に少しずつ関わり始めています。

 

居場所づくりに関しては、子育て支援にとどまらず、地域で暮らす人の孤独・孤立対策のキーワードにもなってくるのではないでしょうか。

 

東日本大震災を経験した社協としては、全国で頻発する自然災害におけるボランティアの活動の必要性と運営について、財政支援の強化をお願いしたいです。

 

現在、ボランティアセンターの設置運営費やボランティアが利用するバスの借り上げ代、スコップなどの活動に要する資材は、公費負担の対象になっていません。行政からの補助か民間資金に頼っているのが現状です。

 

現行の災害救助法の第4条4号「医療及び助産」という項目に、福祉という文言を加えることで、災害救助法の公的財源を充当することができます。災害時のボランティア活動がスムーズに進むようになるのではないでしょうか。

 

あべ・えいいち 宮城県矢本町(現東松島市)出身。74歳。68年、矢本町入庁。95年から議会事務局長など歴任。市町村合併により、2007年総務部長。10年3月に定年退職した後、東松島市社会福祉協議会常務理事および事務局長に就任。11年3月から災害ボランティアセンター長、社協生活復興支援センター長を務め、21年6月から会長に就任。

 

東松島市 日本三景の「松島」の東側に位置し、沿岸漁業や農業が盛ん。人口3万8385人(2023年12月1日現在)。高齢化率は30.97%。東日本大震災で1111人の犠牲者が出た。市社協の職員数は52人で、このうち正規職員は20人。福祉専門職の増員により、03年と比較して2倍以上に増加した。