住民の声に耳を傾け、介護を軸に地域貢献 妙光福祉会(山形市)

2023年1228 福祉新聞編集部
毎年恒例の秋祭りでは、地域のボランティアが踊りを披露。利用者も大いに盛り上がった

地域にやすらぎの場の実現と、40年にわたり、制度のない事業にも積極的に取り組んできた社会福祉法人妙光福祉会が、蔵王、朝日連峰を望む地、山形市蔵王上野に県内初の軽費老人ホーム(A型)を開設したのは1985年。柳生法雄理事長(74)は「時代に合わせた地域への貢献は、この地に住む人たちの声に耳を傾け続けることです」。昨年、山形県から実績が評価され「やまがた認証介護事業者」に認定。山形市から委託された将来を見据えた介護予防のモデル事業にも取り組んでいる。

 

「80年代、地域での認知症問題が今後深刻化することを、埼玉県桶川市福祉事務所職員として実感していました。私はこの問題が家族に大きくのしかかってくると思い、さまざまな取り組みを始めました。それが新聞やNHKにも取り上げられ、各地へ講演に。その一つが妻貞孝の実家(天台宗妙光院)がある山形市でした。それから妻と二人三脚で地域の人たちのさまざまな問題に正面から向き合ってきました」。快活に語る山形県社会福祉法人経営者協議会の会長でもある柳生理事長。

 

2021年に急逝された貞孝前理事が談笑する写真が掲載された「天台ジャーナル」(2004年7月)には、「職員も利用者もさまざまな人生の大家族、理屈では心は開けない」などと夫妻の福祉に対する思いのこもった言葉が並ぶ。

 

「私たち職員は日々、利用者から学ぶことが多く、1993年の特別養護老人ホーム(定員60人)開設当初から施設を利用者とともにつくり上げてきたと思っています。新型コロナがまん延し、施設での感染対策が大きく変化しましたが、職員が慌ただしく動いている中、戦後の激動期を生き抜かれてきた利用者の皆さんが、怖がることなく生活を送っている姿を見ると、さまざまなことに気付かされました」と特別養護老人ホーム「蔵王やすらぎの里」の小笠原朋秋副施設長は話す。

 

認知症の人たちとの関わりについて問うと、「知識やマニュアルはあくまで基本で、一人ひとりをどれだけ分かってあげられるか。小さな細かい部分でも見落とさず、対応していくことで安心していただけると思います」。

 

「蔵王やすらぎの里」から指呼の距離に、農園もある敷地4000坪(1万3200平方メートル)の「ケアタウンやすらぎの里金井」がある。柳生弘充施設長・法人本部事務局長からは「山形市の委託で『山形市元気あっぷ教室』のモデル事業に取り組んでいます。理学療法士らが運動機能回復のための運動や自宅に帰っても楽しくできることを伝えています」と、壁に貼った運動プログラムを見ながら順を追って説明してくれた。

 

金井から車で10分のところが介護老人保健施設「寒河江やすらぎの里」である。30年間にわたって現場に立つ古里みどり管理課長は「ある利用者から、『私こんなにお世話になっていいのだろうか』と言われたことがあります。たまらず『若い時にたくさんのご苦労をされてきた分、今度は私たちがお世話をする番です。順番だから気にしないでください』と話すと、涙を流しながら『ありがとう』と。高齢の利用者が安心して生活するためにも、日々心配りをすること、その大切さを改めて教えてもらった瞬間でした」と振り返る。

 

山下淳施設長・医師は、「就任8カ月目です。利用者の対応は医師として当然ですが、もう一つ大きな役目は職員とのチームワークを保つことだと考えています」と穏やかな物腰で話す。

 

山形は厳しい雪の季節に入ったが、この法人運営のそれぞれの里には、それに負けない温もりとやすらぎがある。

 

妙光福祉会=短期入所生活介護、通所介護事業所、通所リハビリテーションなど、居宅サービスも実施(介護予防も含めた)、地域支援にも取り組む。職員数195人。