増える児童虐待、社会的養護受け入れ減に危機感〈全国乳児福祉協議会〉

2023年1015 福祉新聞編集部
基調講演をする平田会長

第72回全国乳児院協議会が10月5、6日に長崎市で開かれた。全国乳児福祉協議会(平田ルリ子会長)の主催。基調報告で平田会長は、近年、児童虐待が増え続ける一方で、施設や里親といった社会的養護の受け入れが減っていることに危機感を示し「リスクの高いこどもへの必要な対応がなされていない」と述べた。

 

児童相談所による虐待相談対応は過去最多を更新し続けており、2021年度は20万7660件。13年度の7万3802件と比較すると8年で約3倍になっている。

 

しかし、社会的養護の受け皿は減っているのが現状だ。

 

児童養護施設や乳児院、里親などに措置されたこどもは、13年度が3万6042人で、21年度が3万3157人と微減。一方で乳児院への一時保護委託数は年々増えている。

 

大会の基調講演で平田会長はこうした現状について「増加した虐待ケースのほとんどが在宅で潜在化している」と指摘。「専門的にケアすべきこどもは減っているのか。逆に考えれば、国による予算の枠の中で、措置による支援がコントロールされているのではないか」と疑問を呈した。

 

国は社会的養護について家庭養育優先原則を打ち出し、里親の割合を増やす方針を示している。乳児院にはケアニーズの高いこどもの支援や在宅支援など多機能化を求める。

 

平田会長は里親委託率を上げるために「措置控え」も起きていると強調。定員を満たしていない施設も多いことから、職員育成に支障も出ているとし「長年培ってきた乳児院の力が減少することが起きている」と述べた。

 

その上で「里親か施設かではなく、こどもにとって必要な支援を基本に考えるべきだ」と話し、今後もアセスメントや被虐待児への専門養育などの機能を持つ乳幼児総合支援センターの構想に向け取り組む考えを示した。