「行動制限」で無力感 当事者が精神科病院入院の体験語る(厚労省検討会)

2025年0128 福祉新聞編集部
6人の参考人が意見を述べた

精神科病院に入院中、隔離や身体拘束といった「行動制限」を受けた当事者が15日、厚生労働省の検討会で自身の経験を語った。「行動を制限されたことで無力感を抱いた」と振り返り、今後は患者に寄り添って希望を持たせる医療を目指すよう求めた。行動制限された人の体験が検討会で語られるのは異例。

同日の「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」(座長=田辺国昭東京大大学院教授)で、当事者、学識者ら計6人が参考人として意見を述べ、2人の当事者が行動制限の経験を語った=写真。

その一人が古川裕也さん(31)で、現在、社会福祉法人・花(青森県)の障害者生活支援センターで働いている。統合失調症により20歳のとき、同県内の病院に8カ月入院した。

隔離室には3カ月入ったと言い、「体も拘束され、他者に支配される感覚だった。隔離の回数が増すと無力感も増えた」と話した。

もう一人は日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構副代表理事の内布智之さん(52)。現在は会社勤めだが、20代後半で統合失調症になり、熊本県内の病院で隔離を経験した。

「強制的な治療により、患者は無力感の中で心の傷をより深める。医療者は本当に人命優先で行動制限しているのか?『患者が暴れるから』は逃げ言葉だ」と訴えた。

一方、2人に共通するのは、入院中に患者の思いをくみ取る看護師もいたという点だ。

これからの精神医療に望むのは「希望の持てる関わり」だという。具体的には「医療者と当事者が一緒に考えること」(古川さん)、「力と力で衝突するのではなく、心の対話で共鳴しあうこと」(内布さん)を挙げた。

拘束は20年で2倍

厚労省の集計によると、精神科病院における隔離は過去20年間で1・6倍、拘束は2・1倍に増えた。

2022年6月に終えた検討会でも隔離や拘束を減らすことを議論し、報告書には「不適切な隔離・身体的拘束をゼロとする取り組み」を記したが、政策面での進展はない。

今回の検討会でもこのテーマは再び俎上に載り、参考人の一人、日本身体拘束研究所(東京)の長谷川利夫理事長は「不適切かどうかは留保して、身体拘束全体を減らすことを目標にすべきだ」とし、当面は半減を目指すよう提案した。

同じく参考人の山田悠平氏(全国「精神病」者集団)は隔離・拘束が精神保健福祉法に基づくものである点に着目し、「精神医療と一般医療を分断させてきた同法の解体と一般医療への編入が不可欠だ」と唱えた。