福祉避難所を防災計画に 能登地震経験の医師提言(川崎市)

2024年0828 福祉新聞編集部

川崎市は9日、「災害とメンタルヘルス」をテーマに、こころの健康セミナーを同市内で開いた。石川県立こころの病院の北村立たつる院長(老年精神医学)は基調講演で、1月に発生した能登半島地震の経過を説明し「福祉避難所が機能しなかった。市町村は綿密な防災計画を立てるべきだ」と提言した。

北村院長によると、被災した6市町が平時に指定済みだった福祉避難所は71カ所。それに対し、発災1週間後の1月8日時点で開設されたのはわずか10カ所にとどまった。

介護施設も人手不足のため、高齢者の家族が介護する状況は今後の仮設住宅でも続く見通しで、北村院長は「家族が介護に疲れてもギブアップできず、うつになる危険性が高い」とし、安心して介護を受けられる避難先が必要だと指摘した。

精神障害者が通う川崎市中部地域生活支援センター「はるかぜ」の田中美砂子施設長は、防災について利用者25人から回答を得た調査結果を発表。地域の避難場所を知らないと回答した人が11人だったとした。

「質問項目に対し、『分からない』という回答が多かった。災害時の不安を解消するには、日ごろから一人ひとり丁寧に関わることが不可欠だ」とし、環境の変化がつらい人には在宅避難という選択肢も必要だとした。

市は同セミナーを自殺防止対策の一環として2006年度から開催。災害時のメンタルヘルスも重要なテーマと捉え、市民や市内の保健福祉関係者に呼び掛けている。