〈能登地震から5カ月〉半壊住宅の高齢者支援でケアマネが奔走(能登町)

2024年0603 福祉新聞編集部
自宅で暮らす大井さん夫婦に物資を届ける元さん(右)=石川県能登町

「大井さん、こんにちは。物資のお届けです」。地震で被害を受けた能登町で半壊した自宅に今も住んでいる高齢夫婦を、藤波デイサービスセンター居宅介護支援事業所(社会福祉法人石川県社会福祉事業団)のケアマネジャー、元美智代さん、濵中恵さんが訪ねた。

大井康義、とよ子さん夫婦は発災後、近所の体育館に避難したが、要介護3で90歳の康義さんは立ち上がりが難しくトイレにも行けなかったため、翌日自宅に戻った。仮設住宅も買い物が不便なため断念した。そんな夫婦をずっとケアマネジャーが支えている。夫婦は「サポートしてくれて本当に助かる」と感謝する。

事業所では発災後、利用者80人の安否確認に奔走した。避難所、町役場、他の事業所と連携を取り、道路が陥没して恐怖を感じながらも利用者宅に向かうなどし、1月中旬にようやく全利用者の無事が確認できた。その後も自宅で過ごす利用者に食料などの物資を届け、支援金などの各種情報を伝え、困り事にも応じてきた。

こうした支援はケアマネジャー頼みで、介護サービスにつながっていないため事業所の収益はない。元さんは「命が最優先であり、人とのつながりで見捨てることはできない」と話す。ただ経営的には「コロナ特例のような報酬があれば」ともこぼす。

発災から5カ月。現在の事業所の利用者は要介護者が40人。事業所に多くの相談が寄せられるが、まだ町内の在宅介護サービスが整っていないため、特に重度の利用ほど帰郷できない。事業所併設のデイサービスもボイラーの破損で入浴できず、水循環式シャワーを利用しており、サービスの利用回数も1人週1回と制限している状態だ。

一方、新たに要支援の人15人など利用者が増えた。避難生活が長期化して状態が悪化しつつある高齢者が増えたとされる。

大井さん夫婦には金沢市にこどもがいるが、能登町出身の康義さんが故郷に住むことを望んでいる。元さんらはその意思を尊重し、寄り添っている。町内で復旧状況は異なるが、「在宅介護サービスが整えば利用者が元のように暮らせる」と話す。