能登地震被災の佛子園、種別超え支援 輪島カブーレでは要配慮者に温泉も提供

2024年0120 福祉新聞編集部
輪島カブーレの割れたガラスを片付ける利用者

能登半島地震から20日が過ぎた。被災地の状況が刻々と変わる中、石川県白山市の社会福祉法人佛子園(雄谷良成理事長)は輪島市河井町の「輪島カブーレ」、能登町の「日本海倶楽部」が被災しながらも、地域に根付く福祉施設だからこそできる復旧活動に奔走。福祉種別を超えた支援も行われている。

 

佛子園は2日、災害対策本部を立ち上げ、公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)と連携して活動している。市町村合併で大規模化した自治体が災害時の混乱の中で細部まで対応するのは難しく、「福祉施設は地域にいないと分からない情報を持っており、自治体のエアポケットを補い、支援につなぐことができる。そんな機能を発揮できる業界はほかにない」と雄谷理事長は話す。

 

被災施設のため、県内の障害、高齢などの福祉関係団体、社会福祉法人が種別を超えて団結し、金沢市の「シェア金沢」を本拠点とし、ハブ拠点の輪島カブーレ、日本海倶楽部を通じて、早い段階から人的支援や物的支援を行った。被災施設から要望を聞き取り、佛子園ホームページに載せることで必要な支援物資を集めることもできた。これまでの災害支援は種別ごとに行うことが多く、結束した支援活動は画期的な取り組みとなった。

 

輪島カブーレから支援物資を受けた特別養護老人ホーム施設長は「人手に余裕もなく非常に助かっている」と感謝した。

温泉で安らぎ提供

輪島カブーレは障害者就労支援を中心とした福祉事業などを行っている。建物に大きな被害はないが、ライフラインが止まった。10日に電気が使えるようになったものの断水は続いている。

 

そんな中、輪島カブーレの天然温泉に水質チェック後の12日から入れるようになった。市の要請もあり、自衛隊の災害用風呂に行けない福祉事業所の要配慮者に提供している。

 

 

輪島カブーレの温泉で温まる高齢者

 

14日は4人が訪れ、介護職員に介助を受けながら入浴した高齢男性は「今年初めてのお風呂。幸せ200%」と笑顔を見せた。さらに入浴後に食事も提供。非常食が続く中、正月の餅の代わりとして、ぜんざいや生野菜サラダなども振る舞い、利用者にはひとときの安らぎとなった。

 

また、現在、福祉避難所で生活している輪島カブーレで働く障害者は食事処どころの清掃、トイレ掃除、施設周辺の片付けなどを行う。支援する側、される側ではなく、一緒に復旧に向けて取り組んでいる。

 

職員も被災した自宅の片付けは後回しで復旧活動や福祉避難所の支援などに当たっている。寺田誠・輪島カブーレ施設長は「車中泊の職員もいるが、地域を元気にしようとみんなで取り組んでいる」と話す。

コミュニティーセンターで自死防ぐ

被災施設で断水が課題となっていることから、佛子園は地域の業者から借りた大型給水タンクに浄水場で水を入れてトラックで運んだ。同じことを自治体が行うとすれば「縦割り」で時間がかかるが、佛子園は日ごろから地域とのつながりを生かすことで迅速に実施できた。輪島市に復旧作業員が拠点にする場がなく、支援に入れないとの情報が入ると、全利用者が避難している特養を一時的に使わせてもらう案を考え、実現に向けて話を進めている。

 

さらに、着工が始まった仮設住宅での自死を防ぐため、住民が地域ごとに移転し、コミュニティーセンターなどを設置するよう県などに進言している。

 

復旧は長い闘いになるが、福祉の先達は追い込まれても周りに目を向けてきた。雄谷理事長は「福祉施設はどの自治体にもある基幹産業であり、災害時の支援のあり方として『創造的復旧』を目指して取り組んでいく」と力を込める。

 

社会福祉法人佛子園ウェブサイト