女性のやせ過ぎ、診断基準つくり警鐘 学会が新疾患を定義

2025年0619 福祉新聞編集部
新しい疾患概念を氷山に例える田村教授(左端)

日本肥満学会(横手幸太郎理事長)は6日、若い女性の低体重・低栄養による健康障害を新しい疾患概念として確立させるため、2027年までに診断基準を固める方針を明らかにした。貧血や月経周期の異常、筋力や骨密度の低下に加え、抑うつや不安といった精神症状の根底に低体重・低栄養があると判断。疾患として確立させることで「やせ過ぎ」に警鐘を鳴らす。

同日、同学会の3人の医師が千葉市内での講演で明らかにした。若年女性の低体重・低栄養の原因は、意図的な減量よりも、幼少期からの刷り込みによる無意識のものが大きいと分析。「やせ過ぎ」を一律に否定するのではなく、「正しい知識を得た上でリスクを判断し、自分で適正な体型を選べる社会を目指す」(田村好史順天堂大教授)とした。

同学会による新しい疾患の定義は「低体重または低栄養の状態を背景として、それを原因とした疾患・症状・徴候を合併している状態」。18歳から閉経前までの女性に特有の症候群と位置付け、摂食障害は除外する。

定義や診断基準を確立できれは、学校教育、健康診断、治療指針の作成につながるとみる。肥満対策として内臓脂肪に着目したメタボリックシンドロームが浸透したのと同様の効果を狙う。

同学会によると、日本の20代の女性の2割が低体重(BMI18・5以下)で、先進国の中でも特に多い。1990年代以降その傾向が続き、2000年代に入ると携帯電話(スマホ)やSNSの普及により「やせ=美」という価値観が浸透したという。

それによる健康障害は認識されながらも、疾患概念が確立していないことから「肥満対策に比べると医療・公衆衛生施策が不十分。高齢者以外の低体重・低栄養のリスクは政策的に軽視されてきた」(小川渉神戸大特命教授)とみている。

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