輪島の仮設住宅に支援拠点 災害関連死防ぐ〈佛子園・石川〉
2025年04月27日 福祉新聞編集部
能登半島地震の被災者が暮らす石川県輪島市の仮設住宅「マリンタウン第1団地」敷地内に、包括的支援拠点「コミセンマリンタウンBASE」が4月20日に開設した。社会福祉法人佛子園(雄谷良成理事長)がデイサービスや介護予防を提供し、見守りや相談支援を通じて災害関連死を防ぐ。銭湯や食堂もあり、近隣住民も含めて人が交わり、支え合うコミュニティーをつくっていく。
地域の憩いの場に
「元気な人もそうでない人も、ご飯を作りたくても作れない人も、1人でお風呂に入ったら危ない人も、みんなワンストップで対応できる。困ったらここに来れば何とかなる」。雄谷理事長はオープニングセレモニーで施設の意義をそう説明した。
同団地は市内で最初に完成した仮設住宅。約90戸あり、輪島朝市の火事で自宅を失くした人が多く入居しているという。施設はその一角にあり、木造平屋で延床面積は235平方メートル。約2億円の整備費は全額国が負担した。
銭湯と食堂は20日から営業を開始。銭湯は市内の仮設住宅に住む人は無料。食堂では地元の家庭料理を中心に、定食や麺類など30種類以上を有料で提供。就労継続支援A型事業として障害者も働く。
早速にぎわった食堂では、団地に住む4人の高齢者も酒を飲み、食事をしながら楽しく過ごした。その1人で息子と2人で住む70代女性は「ここは最高。さみしくない」と笑顔を見せた。団地の橋爪和夫自治会長も「人に会って話して笑うのが一番。心の復興の特効薬になる」と喜んだ。
ようやく実現
災害後の避難生活の疲労や環境の変化によるストレスなどが原因とされる災害関連死をなくすため、こうした拠点の必要性を雄谷理事長はかねて訴えてきた。この日ようやく実現したことに「東日本大震災でも熊本地震でもなかった。ここが日本で1番最初」と達成感をにじませた。
施設の活動には佛子園や青年海外協力協会が関わるが、「住民が自分たちで作り上げていくことが大切。お風呂に入ったり、ご飯を食べたりする中で見えてくる自然な関係性をつくっておくことで、いざ何かがあったときに支え合える。こどもも大人も障害者も『ごちゃまぜ』でいろんな人が日ごろから関わっていく」ことを強調した。
5月以降、佛子園が運営するサポート拠点は市内と同県能登町に計4カ所整備される。職員募集には多くの応募があり、地元の雇用も生み出している。