介護給付の適正化を提言 財政審、来年度予算で建議

2024年1207 福祉新聞編集部

財務省の財政制度等審議会(十倉雅和会長)は11月29日、加藤勝信財務大臣に対して、来年度予算案に向けた建議を提出した。総論では「もはやコロナ禍ではない」と打ち出し、経済成長に向けて30年続いたコストカット型経済からの転換を求めた。介護保険改革では、全世代型社会保障制度の構築に向けた給付の適正化とともに、現役世代の保険料負担を最大限抑制することを明記。このほか、障害福祉や保育分野の改革の方向性についても示している。

介護保険については、高齢化が進む中での持続可能性を踏まえ「さらなる改革は不可避」と指摘。引き続き2027年度の次期計画までに、報酬の合理化などを進める必要があると強調している。

具体的には▽保険給付の効率的な提供▽保険給付範囲の見直し▽高齢化・人口減少下での負担の公平化――という三つの視点を示した。引き続き事業者には、処遇改善加算の確実な取得と、経営の協働化・大規模化を求める方針だ。

また、ICT(情報通信技術)機器の導入を進め、特別養護老人ホームにおける人員配置基準の柔軟化に取り組むべきと強調。手数料の高い介護の人材紹介会社への規制についても盛り込んだ。

さらにケアマネジメントについては「費用を現役世代の保険料で肩代わりするのは世代間の公平の観点からも不合理」だとし、費用負担の導入を訴えた。

障害分野についても、当初予算額が約2兆円と10年で倍増するなど高い伸び率となっている。理由は、事業所数に応じて増加しやすい構造にあるとして、今後、就労継続支援の適正化やグループホームの総量規制などを進める方針を示した。

具体的に就労継続支援B型事業は、次期報酬改定で利用者の平均利用時間を細かく設定した報酬体系へと見直す考えを表明。利用が4時間未満だった事業所の収支差率は全事業所平均と比べて高く、報酬が過大な可能性があるという。

GHについては、連座制の適用を受ける事件もあったことなどから、必要なサービスを適正に提供するよう総量規制の対象とすべきだとしている。

保育分野に関しては、利用児童数が減少に転じており、定員充足率も低下しているのが現状だ。そのため待機児童の解消に向け、受け皿増を最優先した政策を大きく転換する必要があると指摘。今後は地域のニーズに応じた提供体制と、全職員の処遇改善を検討する必要があるとした。

このほか生活保護については、月内に同じ薬剤を複数の医療機関から処方してもらう重複投薬や、頻回受診の対策を進めることを明記。ガバナンス強化に向けて保護受給者の国民健康保険制度への加入も提案している。