18歳からの「保健室」 住居付きで伴走支援(アマヤドリ、神奈川)

2024年1004 福祉新聞編集部
オリジナルの絵本を囲んで談笑する菊池さん(右)

安心して住める家がない18~29歳の若者の生活相談に応じ、保証人なしで借りられる住まいを用意する一般社団法人アマヤドリ(菊池操代表理事、神奈川県)が、学校で一息つける保健室のような役割を果たし、注目されている。

18歳になると児童福祉法の対象から外れ、アパート契約することも難しい「18歳の壁」に着目。「死にたい」「暴力を振るう親を頼れない」などと漏らす若者を支える活動が、県のボランタリー活動推進基金に採択され、3年目を迎えた。

県は4月施行の「困難な問題を抱える女性支援法」を踏まえ、民間団体との連携を強化する方針。アマヤドリの取り組みを参考に、女性支援の新しい拠点をつくる予定だ。

「自ら選ぶ」を支える

菊池さんは高校の元養護教諭。いわゆる保健室の先生で、退職した今も心掛けるのは、雨宿りできるような保健室の機能だ。

「自分の生き方を自分で選べるよう伴走するのが私たちの役目。自分の誕生日を喜べない若者が1年後、2年後の誕生日をどんな気持ちで迎えたか定点観測している」と話す。

精神疾患を抱え、仕事に就けず、生活費に困り、頼れる人もいない。そんな若者が病院や役所、弁護士事務所などに行く際、無償で付き添う。付かず離れずの距離を保つのが腕の見せどころだ。

横須賀市内に若年女性専用のシェアハウスや父子も入居できるアパートを持つアマヤドリ。2020年12月の設立からの3年間で延べ5000人(実人数140人)の相談に応じ、50人以上に住まいを提供してきた。

公的な制度に基づくサービスではないため、若者が警戒して相談をためらう現実もある。そんな若者に安心してもらえるよう独自の絵本を制作して配ったり、オリジナルソングをユーチューブで配信したりしてきた。

制度に縛られず自由に動ける半面、活動資金は期間の限定された助成金や寄付が頼り。菊池さんは「毎月一定額を寄付してくれるサポーターが40人いるが、これを100人にするのが今年の目標だ」と話している。