能登地震で被災の特養あての木園が再開 「もう待たせられない」

2024年0817 福祉新聞編集部
避難先からあての木園に戻った83歳の利用者(左)と談笑する職員

1月の能登半島地震で被害を受けて休止していた、石川県輪島市の特別養護老人ホームあての木園(社会福祉法人輪島市福祉会)が半年ぶりに再開した。7月中に利用者10人が避難先から戻り、以前の日常が戻ってきた。設備は完全復旧していないが、利用者と職員をこれ以上待たせるわけにはいかなかった。

発災当時、特養に87人、ショートステイには10人の利用者がいた。ケガ人は出なかったが、電気、ガス、水道が使えなくなり、利用者の体調が懸念されたため、DMAT(災害派遣医療チーム)などの協力を得て県内の特養など約20カ所に分散避難した。

その後、亡くなったり、家族の都合で別の特養に転居したりする利用者がいる中、約40人の利用者が園の再開を待っている。谷口広之施設長は「利用者が戻りたいと言ってくれるのが何よりも励み」と話す。

一方、雇用を維持するため、特養の休止中も職員に給与を支給してきた。法人の収益が震災前の約10分の1に減る中、雇用調整助成金で8割を賄い、残り2割(月約1000万円)は法人が負担してきた。

職員の半数が退職

しかし、震災前、法人全体で116人いた職員のうち、自宅が被災し転居先で仕事を始めるなどして54人が退職してしまった。「休止が長引くと職員の不安をあおってしまう。働いた方が張り合いになる」と谷口施設長。

園は本館と新館があり、利用者は下水道以外復旧した本館で過ごす。まだ厨房で調理ができず、食事は冷凍宅配食で刻み食などが提供できない。損壊した天井はそのままで、応急措置でむき出しのパイプもあるが、被災の混乱の中でもそうであったように最善策を考え、再開を決断した。再開することで市民に安心して住める地域だと伝えたい思いもある。