無人駅の業務受託 福祉法人が地域交通支える(長崎)

2024年0313 福祉新聞編集部
視覚障害のある乗客(左)を誘導するながよ光彩会の職員=同会提供

午後から駅員が不在になる長崎県のJR長崎線・長与駅(長与町)で、地域密着型特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人ながよ光彩会(貞松徹理事長)が駅業務を担っている。同会が駅構内に開設したカフェ「グッドステーション」のスタッフが兼務し、認知症が疑われる高齢者への対応、車いす利用者の乗降介助などで活躍している。

 

1日約1500人が利用する同駅は切符の販売窓口が廃止され、駅員がいるのは午前中だけだ。同会運営の地域交流スペース「み館」に訪れた高齢者から、「駅員不在の時間が不便。どちらのホームから乗ればいいか分からない」といった声が寄せられていた。

 

同会は利用客の不便を解消する方策を模索した結果、JR九州が民間事業者のパートナーと駅を起点とした地域活性化を目指すプロジェクト「九州DREAM STATION」にエントリー。パートナーに選ばれた。

 

JR九州と駅業務の委託契約、長与町と駅舎清掃の委託契約をそれぞれ締結した同会は昨年9月、地域のにぎわい創出も見据えたグッドステーションを開設した。

 

駅構内のコミュニティーホールを187万円かけて改装。法人職員2人がスタッフとして午前11時~午後7時まで常駐、同会運営の就労継続支援B型事業所の理学療法士ら5人で回す。

 

自家焙煎のコーヒーを提供するカフェや、障害者が製作した木工品などを販売するショップを備え、スタッフが駅員不在の時間帯の改集札や乗客の案内、乗降介助、駅舎の清掃も担う。

 

月に3、4件は福祉的な対応を必要とするケースがあるといい、ビニール袋1枚を持っただけで駅を訪れた認知症が疑われる高齢者を社会福祉協議会に連絡して保護したこともあった。

 

地域活性化に向けた動きも出始めており、JR九州の観光列車「ふたつ星4047」が16日から長与駅に特別に停車して、グッドステーションなどが物販を行うことが決まっている。

 

貞松理事長は「地域に詳しく、福祉に専門性を持つ社会福祉法人にとって駅は強みが発揮できる場。今後も公共交通を支え、福祉の力で地域を盛り上げたい」と意気込んでいる。