訪問、通所の複合サービスを議論 委員からは否定的な意見〈介護給付費分科会〉

2023年0911 福祉新聞編集部

 2024年4月の介護報酬改定の焦点の一つ、訪問介護と通所介護を組み合わせた新たな複合型サービスの創設について8月30日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会で議論が始まった。目的は限られた事業所や人材を有効活用し、どの地域でも必要なサービスを確保できるようにすることだが、委員からは「制度がさらに複雑になる」「必要性を感じない」など否定的な意見が目立った。

 

 複合型サービスの創設は、昨年末の社会保障審議会介護保険部会の意見書で提起されていた。

 

 厚労省の昨年度の調査によると、訪問介護と通所介護を併用している利用者は47%いる。通所介護を提供する法人の55%が訪問介護を、訪問介護を提供する法人の53%が通所介護も行っており、メリットととして人材を有効活用し、職員の働き方の希望に応じられることなどを挙げた。また、訪問系と通所系のサービスを併用する利用者について事業所間の情報共有が十分でないデータも示され、厚労省は複合型サービスであれば情報共有の課題を解消できることを示唆した。

 

 これらの説明に委員の多くが懸念や疑問の声を上げた。訪問介護の人材不足対策にも見てとれることから「根本的な人材不足対策ではない」「仮に通所介護員が訪問介護をするにしても研修が必要」といった意見があった。

 

 また、厚労省は複合型サービスを地域密着型サービスに位置付ける意向を示したことに対し、地域密着型サービスは原則その市町村に住民票がないと利用できないことから「地域格差が広がる」との指摘もあった。さらに、小規模多機能型居宅介護との違いが分かりづらいなど制度の複雑化を懸念する意見や、今回は示されなかった介護報酬の在り方やケアマネジャーの配置有無に言及する意見もあった。課題の情報共有については「事業所間がしっかり連携すればよいだけ」とする発言もあった。

 

 一方、「人材の有効活用や柔軟な対応による質の高いサービス提供が期待でき、複合型サービスの創設に意義がある」と肯定的な意見もあった。

 

 厚労省は会合後、「どういうサービスの組み合わせができるのか、効果や必要性を含めて今後も議論する」とした。

 

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