利用者の生活能力を数値化 実践的な支援目指す救護施設
2022年04月28日 福祉新聞編集部茨城県の救護施設ナザレ園の佐々木和也施設長は「施設による一律の管理的な支援は、一部の利用者にとって自立の機会を損なう結果になっているのでは、と常々考えていました」と話す。そして、取り組んだのが、「Vineland-2(ヴァインランド・ツー=適応行動尺度)」を活用した実践的な利用者支援プログラムの開発だ。生活能力を数値化し、一人ひとりに合った支援を目指す。
職員は利用者と相談して、クリアしたい項目を設定する。例えば、金銭管理という項目では、月6万円程度で1カ月間やりくり(食費、水道光熱費、携帯電話代など)をし、必要に応じて貯蓄できるかを、1点=全介助、2点=一部介助、3点=見守り、4点=自立という観点で点数を付ける。
職員は、なぜその点数にしたのかを文章化する。利用者にとって何が不得意なのかを明らかするのが狙いで、点数を上げるために必要な支援を考えるきっかけにもなるという。
個別に支援内容を組み立てる必要があるため、職員にも専門性やスキルが求められる。「職員にもいろいろ考え支援に当たることを願っている。利用者個別の支援がより進むのではないでしょうか」と期待感を口にする。
助成事業では適応行動アセスメントを運用するための研修費用に加え、屋根付きの水耕栽培施設も整備した。
作業指示の達成や他者との協力、感情・行動のコントロールといった項目での支援が年中可能に。作物の多くは施設の給食で使われ、一部は販売されて利益を利用者に還元する。
現在、試験段階を経て運用段階に移行しようとしている。佐々木施設長は「評価項目ごとの支援内容をより具体化してマニュアル化し、現場で活用できるようブラッシュアップし、施設に浸透させたい」と今後の方針を示した。
Vineland―Ⅱ
個別支援計画策定にあたり、日常生活に必要な能力(食事、身だしなみ、金銭管理、対人関係など)について得意、不得意を調べる心理検査の一種。ナザレ園は▽コミュニケーション▽日常生活スキル▽社会性▽運動スキル――の4領域で全39項目を設定。項目ごとに評価点数を4段階で付けるなどアレンジした。日本では、児童の発達支援に関するアセスメントツールとして、厚生労働省が発行する「放課後等デイサービスガイドライン」で利用が推奨されている。