データ活用で社会保障を変革 産官学連携の新団体
2023年01月18日 福祉新聞編集部産官学が連携してデータ活用による社会保障の課題解決を目指す一般社団法人「Data for Social Transformation」(DST)が12月16日、立ち上がった。経済同友会(櫻田謙悟代表幹事)の会員など企業による会費を中心に運営し、テーマごとのプロジェクトをつくるという。
共同代表理事には、オイシックス・ラ・大地社長の高島宏平氏、近藤正晃ジェームス・元ツイッター副社長、宮田裕章・慶應義塾大教授が就いた。
今後は貧困や介護、医療、雇用などのテーマを設定。大学などに調査研究を委託する。プロジェクトに情報プラットフォーマーも巻き込むことで、エビデンスに基づいたイノベーションを起こしたい考えだ。
プロジェクト当たりの予算は約1000万円を想定。終了後は成果を発信するとともに、実際に自治体などと組んで実践してもらうという。すでに介護離職や男性育休をテーマにしたプロジェクトが始まっている。
同日の設立イベントで、高島共同代表理事は「見切り発車ではあるが、データの力で社会を変えたい」とあいさつした。その後、設立発起人でもある武田薬品工業の岩崎真人・代表取締役や、ヤフーなどを運営するZホールディングスの川邊健太郎社長らが登壇した。
DSTが目指すモデルの一つが、米マサチューセッツ工科大学が設立した研究所「J-PAL」だ。社会変化を測定する手法を用いて発展途上国でこどもの通学率の上昇に向けた施策を研究。その結果、寄生虫を体外に排出する薬の支給が、最も費用対効果があることを明らかにし、2019年にノーベル経済学賞を受賞した。
元宮崎県日南市長でもある崎田恭平・DST常務理事は「医療や介護、失業など社会保障費の大半は、問題が発生した後に給付されているのが現状だ。予防に向けた取り組みに投資することで、イノベーションを起こしたい」と話している。