広島の生口島で福祉車両が観光をサポート 新生福祉会が無料運行

2026年0318 福祉新聞編集部
実証で福祉車両1台を観光向け移動サービスに活用している=新生福祉会提供

 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」の真ん中に位置する生口いくち島(尾道市瀬戸田町)で介護事業や障害福祉サービスを展開する社会福祉法人新生福祉会(山中康平理事長)は法人の福祉車両を活用し、島内の主要観光スポットを巡る観光者向け無料移動サービス「せとうちグライド」の実証に取り組んでいる。

 同法人は島内で、就労継続支援B型事業所と宿泊施設が一体化した全国でも珍しい複合型福祉施設「ボナプール楽生苑」や特別養護老人ホーム、デイサービス、児童発達支援事業所など25施設を運営。リースを中心に福祉車両36台をそろえ、利用者の送迎に当たっている。

 送迎が集中する早朝と夕方以外は車両を使用することは少なく、以前から日中に遊休化する車両の有効活用策を模索してきた経緯があり、1月から実証で観光車両として運行している。

 生口島はかんきつ類の栽培が盛んでレモンは全国トップクラスの生産量を誇るほか、風光明媚めいびな観光地として多くの観光客が訪れる。一方、観光客から観光スポットへの行き方が分かりにくいとの声も上がるほか、路線バスなど公共交通機関が充実しているとは言い難い。

 実証は、法人の福祉車両1台を観光客向けに活用し、フェリーの到着時間に合わせ午前2便、午後2便の計4便運行する。平日は予約のみに対応。ボナプール楽生苑を発着点とし、多々羅大橋やレモン谷、瀬戸田サンセットビーチなど主要観光地を中心に10停留所を設け、好きな場所で乗降することができる。

 運転手は法人職員が務め、車いす対応はもちろん、観光アナウンスも行う。絶景スポットでは5分間の撮影タイムも設けた。

 3月末まで実施し、需要など見極めた上で事業化への検討も進める方針。観光に加え、免許を返納した高齢者ら島民の生活を支えるためにも活用したい考えだ。

 一方、観光や生活上の困り事で福祉法人の車両が有料で客を乗せることについて、目的外使用など関係法令上問題がないのか懸念もあるため、厚生労働、国土交通、経済産業省へ問い合わせもしている。加えて島内のバス、タクシー会社と競合を避けるための調整も必要となる。

 乃美祐太障害福祉課長は「少子高齢化が進む中、福祉法人が所有する福祉車両を地域のために有効活用することは社会的意義がある。事業化に向けてクリアすべき課題は多いが、実現に向けて尽力したい」と話した。

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