国連・障害者権利委が日本に初の勧告 脱施設へ予算配分を

2022年0920 福祉新聞編集部

 国連の障害者権利委員会は9月9日、障害者権利条約により8月22、23両日にスイスで実施した日本政府への初審査の総括所見(勧告)を発表した。障害児・者の施設収容廃止(脱施設化)を求め、地域で他の人と対等に生活するための支援に予算配分することを求めた。勧告に法的拘束力はないが、日本政府は今後の法改正などでこの勧告に沿った対応を迫られる。

 

 勧告の中で「強く要請する」と力点を置いたのは第19条(自立した生活と地域社会への参加)と24条(教育)に関することだ。

 

 19条では脱施設化を唱えた上で、「グループホームを含む特定の生活形態に住むことを義務付けられないように」と念を押した。

 

 精神科病院についてもすべてのケースを見直し、無期限の入院をやめるよう要請している。障害者が他の人と平等に地域で自立した生活を送るための国家戦略と法的枠組みが欠如していると懸念した上で、人材、技術、資金を伴った対応を求めた。

分離教育も中止を

 教育をめぐっては、障害児を分離した特別支援教育の中止を要請し、障害の有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」に関する国の行動計画を採択するよう求めた。通常の学校が障害児の入学を拒めないようにすることも要請した。

父権主義から脱却を

 勧告は「障害のある女性」「就労」「移動」「情報へのアクセス」といったテーマごとに記述しているが、全体を通した思想として、医療モデルや父権主義からの脱却がある。

 

 その象徴とも言えるのが第12条(法の下の平等)だ。ここでは民法による法的能力の制限に懸念を示し、「代替的な意思決定体制の廃止を視野に入れ、すべての差別的な法規定と政策を廃止すること」と勧告。支援付きの意思決定支援メカニズムを確立するよう求めた。

 

 対日審査に先立ち、日本障害フォーラム(JDF、阿部一彦代表)は条文ごとに日本政府の対応に関する見解を「パラレルレポート」としてまとめ、国連に提出。スイスの審査会場に100人超の傍聴団も送り込んだ。

 

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