障害者らがさつまいも栽培を開始 震災で団結、基幹産業目指す(石川)

2024年0617 福祉新聞編集部
障害者と石川県立大の学生が一緒にさつまいもの苗を植えて交流

元日の能登半島地震で被害を受けた石川県能登町で「さつまいもプロジェクト」が始動した。同町で障害福祉サービスを提供する日本海倶楽部(社会福祉法人佛子園、雄谷良成理事長)と住民、農家、企業、学生らが関わり、災害復興と地域発展を目指す。

日本海倶楽部は1998年開設。過疎化が進む町の交流人口を増やすため、これまで町になかったビール工場、地元産の野菜を使うレストラン、農園などを展開。地域に雇用が生まれ、障害者も誇りをもって働く。竹中誠施設長は「障害福祉の枠にとどまらず、町の課題を解決し活性化していく。福祉だけで障害者の幸福はつくり出せない」と話す。

こうした考えがプロジェクトの根底にもある。町の主力産業である米作りが震災で打撃(損失額約1億8000万円)を受ける中、増大する耕作放棄地を活用して地域を巻き込んで取り組む。

今年度は0・7町歩(約6900平方メートル)に2万本のさつまいもの苗を植える。農作業は障害者、住民、農家、学生らも行うことで交流が生まれ、一次産業の魅力を感じる機会にもなる。収穫したさつまいもは金沢市の食品加工業者がすべて買い取るため、年に約2000万円の売り上げが見込める。プロジェクトには日本フィランソロピー協会の補助金も活用する。

ビール工場もレストランも震災で減収となったが、その穴を埋めるだけでなく、農家などにも収益があり、町の基幹産業に育てる。石川県立大の学生とはさつまいものペーストを使った商品開発を共同で行い、将来的に加工品の製造販売も視野に入れる。

竹中施設長は「3年後には8町歩(約7万9000平方メートル)の敷地で年3億2000万円の売り上げを見込む。地域の課題を障害者の仕事にして一緒に取り組むことが大事」と強調する。