国民皆保険と高額療養費制度〈コラム一草一味〉

2025年0423 福祉新聞編集部

和田 勝 福祉社会総合研究所 代表

2025年度予算案は3月31日に参議院で再修正された後、衆議院に回付されて、年度内に成立した。最大の焦点は、健康保険の高額療養費制度の年間多数該当者の負担引き上げであった。

健康保険法は、関東大震災後の1927年に施行されてから間もなく100年を迎える。高度経済成長期の61年に国民皆保険体制に移行して60年余りが経過し、健康と長寿に大きく貢献し、生活を支える重要なインフラの役割を果たしてきた。医療費は長寿化や高額薬剤の普及などもあって、増加を続けており、健康保険の「持続可能性」と「制度への信頼」の確保は、内政における最重要課題であり続けてきた。

高額療養費制度は、福祉元年と呼ばれた73年10月、被保険者の家族給付率の7割への引き上げの際に創設された。同一月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、自己負担限度額を超えた分が保険者から後で払い戻される制度だ。

74年の健保法大改正の際に、被保険者本人の定率2割負担導入と併せて高額療養費制度が拡充され、高額医療の年間多数該当者の負担軽減、世帯の複数者の同じ月負担の合算額の負担軽減、長期高額の疾病(血友病と人工透析)の負担上限1万円の導入など、私自身が直接立案に関わった改正が実現をみた。

2000年の介護保険実施の際には、世帯内の同一の医療保険加入者について、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合計が基準額を超えた場合、その超えた金額が支給される高額介護合算療養費が支給されるようになった。また、入院時および外来受診時の一部負担が限度額を超えた場合には高額療養費の「現物給付化」が行われており、一医療機関ごとの窓口での支払いは自己負担限度額までで済むようになっている。

患者数が少ない難病の場合には難病法により公費で自己負担額が支払われるが、患者数が多いがんなどの疾患は対象外となっている。治療方法の開発と適切な利用は共通する課題であり、他方、難病の中には患者数も相当数あって標準的な治療法が普及してきている疾患もあると聞く。患者の経済的負担の緩和、必要な受療を妨げないといった視点に立った、公平な改革論議を期待したい。

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