障害サービスの収入構造 定員規模別検討

2025年0321 福祉新聞編集部

1.WAMのレポート

施設入所支援サービス費の基本部分単価に影響を与えるものに①利用定員の合計数②障害者支援区分であることを確認した。このうち、障害者支援区分については運営側で決めることはできないので、定員規模別による財務状況の違いをみていく。施設入所支援の定員規模別の財務状況を分析した資料として、福祉医療機構(WAM)が公表している2021年度版「居住系障害福祉サービスの経営状況について」(以下、レポート)の分析結果の視点が大変示唆に富み有益である。本稿ではレポートのデータを引用し、基本部分が定員規模別の財務状況にどのような影響を及ぼすか実際のデータからの洞察をみていく。

2.施設入所支援サービスの定員規模別の財務状況

前述の通り、24年4月から定員規模の刻みが4段階から6段階へ細分化され、より細やかな報酬設定となっているが、レポートでは施設入所支援定員の刻みが表の通り三つとされており、本稿では刻みを「40人以下」「60人以下」「61人以上」と記載する。

定員規模別データ

(1)サービス活動増減差額比率

施設入所支援のサービス活動増減差額比率は「60人以下」までは定員規模が大きいほど高いが、「61人以上」の定員規模では「40人以下」と比べ低くなっている。施設入所支援においては定員規模の増加に伴い、施設経営のスケールメリットが発生するが、一定規模を超えるとスケールメリットが減少している点を従事者1人当たりの生産性、利用者単価、利用率の要素ごとに検討してみる。

(2)従事者1人当たりのサービス活動収益

生産性の指標としては、「従事者1人当たりのサービス活動収益」が稼ぐ力として分かりやすい。レポートによると「従事者1人当たりのサービス活動収益」は、定員「60人以下」までは定員規模が大きいほど高いが、「61人以上」の定員規模では「60人以下」と比べ低くなっている。61人以上の定員規模では「従事者1人当たりのサービス活動収益」が下がる要因を利用者単価と利用率に掘り下げてみる。

(3)利用者支援区分と利用者単価

障害者支援区分が高くなれば基本部分単価が高くなることは確認したが、定員「60人以下」と「61人以上」では支援区分がそれぞれ5・46と5・42と大きな差がないのにもかかわらず、「1日当たりの利用者単価」は定員「60人以下」と「61人以上」ではそれぞれ7029円と6385円と差が出ていることから、定員規模別の基本部分単価が定員増加により想定されるスケールメリット以上にディスカウントされているのではないかと推測される。この点については、24年4月から定員規模の刻みが4段階から6段階へ細分化され、より細やかな報酬設定となったので24年度以降の分析結果を注視してみたい。

(4)利用率

利用者1人が減少したことによる利用率の影響は定員規模が少ない施設がより大きいと想像したが、定員「61人以上」の規模の利用率が93・9%と最も低いのは意外な結果である。利用率の差すなわち稼働率の差が、定員「61人以上」が「60人以下」と比べ「従事者1人当たりのサービス活動収益」が低い要因の一つと言える。

(5)従事者1人当たり人件費

レポートによると「従事者1人当たり人件費」は、定員「60人以下」までは定員規模が大きいほど高いが、「61人以上」では「60人以下」と比べ低くなっている。レポートの定員規模ごとに「従事者1人当たりのサービス活動収益」の高低に「従事者1人当たり人件費」の高低が連動していることから、人件費については利益率よりも「従事者1人当たりのサービス活動収益」との相関が高いのではないかと推測する。従事者1人当たりの生産性を増やすことが人件費に還元できる財源を増やしていると言える。

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