保育所で70歳定年の試み ベテランにも活躍の場を(つぼみ会、東京)

2024年1024 福祉新聞編集部
60歳以上の常勤保育士も元気に働いている=つぼみ会提供

東京都内を中心に11認可保育所を運営する社会福祉法人つぼみ会(東京北区)は今秋、常勤職員の70歳定年制を導入した。生産年齢人口の減少などに拍車が掛かり、今後、保育士不足が一層深刻化することを見据え、経験豊富なベテラン保育士に引き続き保育現場で活躍してもらうことが重要だと判断し、定年を5歳引き上げた。

つぼみ会の職員は326人。このうち保育士は251人で、全保育所が定員まで受け入れるための人数を確保している。職員の平均年齢は35歳と若手が多い職場だが、60歳以上の職員(常勤2人、パート20人の計22人)も元気に働いている。就職フェアや人材紹介会社などを通じ、常勤とパート合わせて毎年30人前後を雇用しているが、採用活動は年々厳しさが増している。

「本人が元気なのに、これまで積み重ねてきた経験や知識が定年の65歳で生かせなくなるのはもったいない」と以前から感じていた中嶋雄一郎理事長が理事会に就業規則の改定を諮り、9月から常勤職員の定年を70歳に設定した。

常勤であれば、保育士、看護師、調理員ら職種は問わず、70歳まで働ける。職員募集に関する記述も「65歳以上」を対象にすることを明記した。保育士は遅番、早番などシフト制勤務だが、65歳以上は希望により、時間帯を固定した1日6時間勤務も可能とする。定年してからブランクがある場合は入職時までに研修などでサポートする。

一方、定年延長により危惧されるのは年金との兼ね合いだ。一定以上の賃金収入を得ている高齢者の年金額が減る「在職老齢年金制度」に配慮する必要があり、中嶋理事長は「社会保険労務士としっかり話し合う必要があり、本人の希望に添うような働き方を模索したい」と話す。また、「こうした制度を構築しても、潜在保育士に届かなければ意味がない」とし、制度の周知にも力を入れていく方針だ。

70歳定年制は都内の7保育所で先行的に導入し、効果などを見極めた上で、都外の保育所でも適用したい考えだ。