〈新任局長に聞く〉児相の体制強化、喫緊の課題 齊藤馨 こども家庭庁支援局長
2025年09月06日 福祉新聞編集部
――就任の抱負を聞かせてください。
前職の内閣府沖縄振興局長では沖縄振興事業の一環として、こどもの貧困問題にも取り組みました。そのほかにも内閣府では、総合調整という立場で少子化対策や障害者施策などにも携わりました。支援局は児童福祉に関する各種制度を所管する立場なので、できる限り現場に足を運んで直接話を伺って課題を把握し、制度をしっかりと運用、改善していきたいと考えています。
――虐待対応件数の増加に伴い児童相談所職員の負担が増しています。
近年、虐待相談対応件数は増加傾向が続いており、こどもの命を守る最後のとりでである児相の体制強化は喫緊の課題です。計画的な増員、業務負担の軽減策、資質向上の支援などについてさまざまな対策に取り組んできました。
さらに来年度概算要求では、自治体が大学と連携し「こども・若者支援人材バンク」を設置して人材募集、求人・求職のマッチングを行うモデル事業なども盛り込んだところです。
――都道府県の新たな社会的養育推進計画が出そろいました。今後の実行性をどう担保されますか。
里親等委託率は増加傾向にあるものの国の掲げる目標と比べ低調となっています。里親等委託のさらなる推進のためには里親支援センターの設置促進や、自治体の抱える課題について伴走的に支援していくことが重要です。昨年度から開催している「里親等委託の更なる推進に向けた自治体間ネットワーク会議」で洗い出した課題の整理や好事例の横展開、里親支援センター設置促進支援に取り組んでいきます。
――児童養護施設や乳児院の今後の役割や期待を教えてください。
国は家庭養育優先原則を掲げ、できる限り良好な家庭的環境となるよう施設の小規模化、地域分散化を進めているところです。入所児童だけでなく、施設の専門性や知見を生かし、地域の妊産婦や子育て世帯を支えるインフラとしての役割も担っていただけるよう、多機能、高機能化に向けた事業も行っています。
――昨年度からこども家庭ソーシャルワーカーの養成が始まりました。現状と課題は。
3月の第1回試験では703人が合格し、すべての都道府県で誕生しました。児童福祉の現場で働く人たちがソーシャルワークの専門性を十分に身に付けて、質の高い支援を実践するための資格です。より多くの人に取得していただけるよう、研修参加にかかる費用の補助などの取得促進事業を行っています。また、認知度向上のための周知・広報に取り組んでいきます。
さいとう・かおる 1967年生まれ。神奈川県出身。東京大卒。92年4月、旧総理府入省。