応援職員が現場に好影響 福島県の介護施設再開等支援事業を活用〈広野町特養ホーム花ぶさ苑〉

2026年10月07日 福祉新聞編集部
応援職員として派遣された斎藤さん。施設職員に刺激を与えた

 社会福祉法人光美会(常盤峻士理事長、福島県いわき市)の広野町特別養護老人ホーム花ぶさ苑(植田博直施設長)は、原発事故に伴う避難指示解除区域の介護施設に、経験豊かな中堅職員を派遣する県の「介護施設再開等支援事業」を活用し、応援職員を受け入れた。研修機会の確保に加え、施設職員への刺激にもつながった一方、被災地では依然として介護人材の確保が課題となっている。

 花ぶさ苑に派遣されたのは、北海道友愛福祉会「静苑ホーム」(江別市)の斎藤弥さん(42)。マネジメントリーダーを務める勤続20年のベテランだ。6月1日から8月31日まで花ぶさ苑の職員と同様に介護業務全般を担った。

 斎藤さんは2018年9月に発生した北海道胆振東部地震を経験し、「自分にもできることがあるはず」と手を挙げた。「静苑ホームは従来型施設だったので、ユニットケアの花ぶさ苑では利用者との向き合い方を改めて考えるきっかけになった」。

 花ぶさ苑の植田施設長は「職員が介護のスキルアップに向けた研修を受けられるほか、急病などにも対応しやすくなった」と受け入れの効果を語る。

 外部の施設から職員を受け入れたことで、普段とは異なる視点や姿勢に触れる機会にもなった。「斎藤さんの丁寧な仕事ぶりに、職員も襟を正したようだ。短い期間だったが、刺激を与えてくれた」と、職員への好影響も語った。

課題は人材確保

 応援職員の受け入れが現場に好影響をもたらす一方、人材確保という課題は残る。

 花ぶさ苑の職員数は27人(正規21人、非正規6人)で「募集をかけても応募がほとんどないのが現状」と植田施設長は話す。現在の入所者は24人で、今後ニーズが高まった場合、支援の質を維持するには職員の確保が欠かせない。

 広野町では原発事故の影響で、11年3月13日から12年3月31日まで避難指示が出された。人口は一時4300人程度まで減少したが、21年度時点で帰還率は9割を超え、人口は5400人ほどとなっている。

 こうした地域で花ぶさ苑は、町の指定管理施設として指定管理料も活用しながら地域に必要な介護サービスの維持を図っている。

 「施設があること自体が、地域の人たちの安心感につながる」と植田施設長。応援職員の派遣は、被災地の介護基盤を支える役割も担っている。

 一方、応援職員の確保も容易ではない。コロナ禍の影響もあり、直近5年間の派遣人数は年間0~2人と低調だった。

 県保健福祉部高齢福祉課の橘内隆主幹兼副課長は「事業の特性上、深刻に人手が不足している施設に派遣されると捉えられ、応募者が増えない一因になっている可能性がある」と分析する。

 「依然として人手不足は厳しい。県としては事業を継続し、少しでも避難指示解除区域の施設を支援していく方針」と話している。


 介護施設再開等支援事業 2017年度に県が独自に始めた事業が前身。18年度から国の「セーフティネット支援対策等事業費補助」を受け、県老人福祉施設協議会に委託して実施している。県内外の社会福祉法人から中堅介護職員を募り、県老施協が派遣先を調整。旅費などの経費を補助する。18~25年度の8年間で37人が応援職員として勤務した。

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