身寄りない高齢者支える 市町村社協を中核に 山本たつ子静岡県社会福祉協議会長
2026年01月01日 福祉新聞編集部
今後、国内の人口減少と働き手の減少を見据え、地域の支え合いの形がより深化しようとしています。中でも増え続ける身寄りのない高齢者支援は大きな社会課題となっており、支え手として社会福祉協議会と社会福祉法人への期待も高まっています。そこで社会福祉法人天竜厚生会の前理事長で、2025年に静岡県社協会長に就任した山本たつ子氏に展望を伺うとともに、先行して実践する地域を取材しました。
――理事長を24年に退任されました。社会福祉法人理事長出身で、女性の社協会長という存在は貴重です。
社会福祉法人との距離をもっと縮めるよう期待されていると思っています。以前、県社会福祉法人経営者協議会長もしていましたが、県社協と市社協の役割はよく見えなかった。
県社協は市町村社協のサポートが重要です。ただ、各地の実態を県や市に伝えて認識を共有することも大切だと思っています。
社会は変化しているのに支援の構造が変わらないから、今ひずみが生まれている。歴史的に積み上げられた上澄みをすくう仕事だけをしていては本質を見失います。社協職員には自らの仕事に誇りを持ってほしいです。
――今後は地域における支え合い機能の低下が懸念され、頼れる身寄りのない高齢者の支援が課題です。社協や社会福祉法人は生活支援や死後事務、入院手続きなどを行う担い手として期待も大きい。
すでにこの問題に直面する社会福祉法人も少なくないと思います。天竜厚生会の地域包括支援センターでも行政から委託を受け、高齢者の安否確認をしています。施設入所や生活保護につなげることもあり、行政ともしっかり関わっています。
また現在、社協が担う日常生活自立支援事業は、予算が脆弱ぜいじゃくで専門員を確保できないという現状もあります。社協への補助金基準額は利用者1人当たり月7900円で、7割以上が赤字です。
一方、利用者の多くが低所得世帯で、料金の増額は現実的ではない。すでに各地で行われている実践をより後押しする制度であってほしいと思います。
――身寄りのない高齢者の支援に株式会社なども参入しています。25年11月には業界団体も創設され、独自の審査基準を設けています。
営利法人は資産がある人向けの支援に力を入れるのではないでしょうか。無料または低額の事業である福祉サービス利用援助事業を行うとは思えない。現実的に数百万円に上る預託金設定や、死後に財産を事業者へ贈与する契約などトラブルもあります。
24年には国の指針もできましたが、強制力はありません。業界団体にはハードルを高く設定してほしいです。
今後は葬祭業者などだけでなく、振り込め詐欺などの反社会勢力が参入する可能性もなくはない。利益目的だとどこかで無理が生じると感じており、国民への啓発も必要です。
――行政に近い立場を利用して社協には幅広い地域住民のために取り組んでほしいですね。国には高い専門性に対して正当な評価をしてほしいと思います。
支援は非常に幅広く、弁護士らの力が必要なときもあります。福祉関係者は前向きに取り組むべきだと思いますが、国や自治体の強力な財政支援がなければ混乱が起きると懸念しています。
また、相続など専門的な対応を行う体制づくりや、社会福祉法人が支援する際に利益相反とならない運用にも留意してほしいです。
――そもそも身寄りがあるなしを問わず、安心して暮らせる地域づくりという課題も根底にあります。友人とのつながりや自宅以外の居場所があれば、安否確認は必要ありません。
これまでは民生委員などが立場を超えて支えていた面もありました。しかし課題が増え過ぎて限界です。働く高齢者も増え、成り手も少なくなっている。
これからは地域の社会福祉法人が連携推進法人をつくり、身寄りのない高齢者を支援するのもありだと思います。市町村の責任のもと、市社協を中心に多くの社会福祉法人が結集して包括的に関わる体制が必要です。
――民生委員自身は課題を解決する手段を持っていませんからね。住民から吸い上げた課題を、社協や社会福祉法人が解決する仕組みは一つの形です。
それには社会福祉法人で地域とつながる人材の養成が重要です。
天竜厚生会には法人内に地域福祉を担当する部署があり、地区社協や民生委員とつながっています。また、職員が民生委員や消防団員の活動をする際は勤務免除にしてきました。今後はそんな取り組みが広がればと思います。
評議員に社協会長や民生委員、学校関係者、経済団体関係者などに入ってもらい、ネットワークを広げるのもいいですね。
つながりつくるプロに
――そうすることで社会福祉法人の公益性はさらに高まりますね。今後、県社協の会長として、どう、かじ取りをするつもりですか。
職員が2400人を超える法人の理事長を経験し、改めて社会福祉は人がベースだと感じています。
それまで利用者へ真摯しんしに向き合うことを信条にしていましたが、就任後は人材養成を第一に気持ちを切り替えました。その思いは今も変わりません。
今後は市町村社協を中心とした福祉関係者のネットワークも大切です。所轄庁が市になって10年以上たちましたが、どれほど連携しているのか。身寄りのない高齢者など地域課題の解決に向け、社会福祉法人には一番身近な市町村社協に結集してほしいと思っています。
同時に福祉分野以外の社会資源とのネットワークも重要です。幅が広がれば支援の力が何倍にも膨らみます。
つながりをつくるプロになる。これこそ福祉関係者が時代に求められている役割だと感じています。
やまもと・たつこ 1948年、結核療養所の回復者を支援する天竜厚生会創設者の山村三郎氏の長女として誕生。東洋大で心理学を学んだ後、同会に就職して心理判定員やソーシャルワーカーとして勤務した。特別養護老人ホームなどの施設長を経て、常務理事に就任。2010年から24年まで理事長を務めた。この間、日本社会福祉士会副会長や静岡県経営協会長なども歴任した。

