2040年見据えた福祉 厚労省が検討会立ち上げ

2025年0118 福祉新聞編集部

厚生労働省は9日、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」を立ち上げた。高齢者人口のピークを見据え、地域の人口構造に応じた支援体制などを話し合う。春までに高齢者分野について議論し、その後、障害やこども分野についても検討する。座長には早稲田大政治経済学術院の野口晴子教授が就任した。

高齢化に伴う介護サービス需要は40年がピークとなる。各市町村が作成した第9期計画によると、全国の利用者は施設サービスが126万人、在宅サービスが465万人になる見込みだという。

ただ、地域ごとに見るとピークとなる時期は異なるのが実情だ。すでに保険者によっては24年までに施設サービスは16%、在宅サービスは20%がピークを迎えている。

会合で黒田秀郎厚労省老健局長は、人口減少の進捗の違いなどから介護の需要動向は地域でかなり差が出ると指摘。「時間軸と地域軸の双方の視点で、課題と対応策を検討したい」と述べた。

続けて厚労省は、すでに需要が減少している「中山間・人口減少地域」、40年以降も需要が増加する「都市部」、需要は当面増加するがその後減少に転じる「一般市など」の3類型に分けて議論してはどうかと提案した。

具体的に中山間地域については、既存の補助や報酬体系で対応可能かを議論する。連携推進法人の活用や、物品の共同購入、請求事務のアウトソーシングなど、事業者間の協力も進めたい考えだ。

一方、大都市部は特に独居高齢者の急増に対応するため、ICT(情報通信技術)やテクノロジーのサービスとの組み合わせを検討。一般市については、現在のサービス提供主体を中心に、どう需要に過不足なく対応するかを考える。このほか、介護人材の確保や経営支援などについても検討課題に挙げた。

全国老人福祉施設協議会の大山知子会長は、すでに地方では福祉的な使命感だけで運営しているケースもあると強調。「地域によっては大胆な報酬上の特例を設けながら、柔軟な対応をしないと撤退が相次ぐ」と訴えた。

全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長は、3年ごとの報酬改定がパッチワーク的な対応になっていると指摘。「40年に向けては介護保険制度の在り方を抜本的に見直さなければならない」と述べ、社会も巻き込んだ議論を求めた。同様に全国老人保健施設協会の東憲太郎会長も「3年ごとの報酬改定で処遇改善に対応するのは限界」と強調し、毎年の交付金などで対応するよう要望した。

今後検討会は、先進的な自治体や事業者からヒアリングし、春ごろに高齢者施策についての中間取りまとめを行う。その後、障害やこども分野などにも議論を広げ、夏をめどに取りまとめる予定だ。