〈厚労省幹部に聞く〉最大の眼目は賃上げ 黒田秀郎・老健局長

2024年0806 福祉新聞編集部

厚生労働省の人事異動で福祉関係部局の幹部が入れ替わりました。伊原和人事務次官とともに、新しい局長、部長にインタビューしました。順次掲載します。

――直前まで厚労省大臣官房総括審議官でしたが、老健局総務課長や大分県副知事も歴任されています。

老健局での勤務は3回目です。大分ではコロナ禍において、医療や介護を中心に県政全体を担当していました。

老健局は、現場を歩いて対話し、政策を組み立てていくことが成り立ちです。もう1回この原点に立ち返りたいと思っています。

――2024年度の介護報酬改定では訪問介護の基本報酬が下がり、現場からは悲鳴が上がっています。

今回の報酬改定の最大の眼目は賃上げです。訪問介護も含め、現場の職員への加算がかなり手厚くなっている。今後、賃上げの状況と供給体制への影響を両面で確認したいと思います。

人口が減る地域の小規模事業所にとって、最大の経営リスクは人手不足です。利用者の自宅に行くヘルパーの仕事は心理的にもハードルが高く、これを下げる工夫にも取り組んだ方がいいと感じました。

また、1人のケアプランは複数の事業所で支えるので、どこかが欠けると困るんですよね。事業所同士が支え合う要素もこれから出てくるかもしれません。

――人材確保はいまだ厳しい状況です。処遇改善も含め、どう取り組みますか。

まずは賃上げが広く行き渡ることが必要です。一方、最初から介護分野を志す人が頭打ちになっている。そこで、事務職など別分野で職探しを始めた人たちを介護の分野に誘導する仕組みが必要なのかな、と思っています。

介護現場は不規則で、肉体的にも負担が大きいという昔ながらのイメージも残っています。今は働き方も変わっていることを知らせることも大切でしょう。せっかくの厚労省ですので、ハローワークという資源に一肌脱いでほしいという思いもあります。

――全世代型社会保障構築を目指す改革に向け、積み残した課題もあります。適正化の余地をどう考えますか。

給付と負担の話は、国民の意識や生活状況を見て検討する必要があり、納得感が大事です。技術が進めば利用者の意識も変わります。

大事なのは他分野と比較し、データを押さえることです。無駄や不正といった文脈ではなく、データを基に議論し、絶えず、普通に暮らす人たちの目線に立って吟味することが大切だと思っています。


くろだ・ひでろう=1967年生まれ。福岡県出身。東京大卒。91年入省。