「場所ではなく人の支援へ」在宅避難も防災計画に(内閣府)

2024年0602 福祉新聞編集部
西日本豪雨で開設された岡山県内の避難所=2018年7月

内閣府はこのほど、大規模災害時の被災者支援に関連し、在宅避難する人や自家用車で車中泊する人も防災計画に位置付けるよう自治体に求める方針を明らかにした。今後の災害において避難所に入れない人が多数発生すると見込み、避難所という「場所」ではなく「人」に着目した支援に転換する。認知症高齢者や障害者ら災害弱者とされる人への支援強化に向けて一歩踏み出す。

車中泊の位置付けも

年内に自治体向けに指針を示す。車中泊の駐車スペースを避難所と位置付けること、DWAT(災害派遣福祉チーム)が在宅避難者を支えることについては、法制度上の対応を検討する。

5月20日、「避難生活の環境変化に対応した支援の実施に関する検討会」(座長=阪本真由美・兵庫県立大大学院教授)の報告書案に盛り込んだ。6月中に正式にまとめる。

認知症や知的障害、発達障害などにより環境の変化に弱い人は体育館や公民館といった避難所になじめず、家族の運転する自家用車や被災した自宅で避難生活を送る例がある。

避難生活の身体的・精神的な負担などが原因の「災害関連死」は自宅で発生する例が多く、在宅避難への支援が乏しいことはかねて問題視されていた。

共通の「調査票」作成

避難所以外で避難生活を送る人を自治体が把握するのは困難なため、内閣府は日ごろから高齢者や障害者とつながりのある社会福祉協議会、福祉事業者などと訓練するよう呼び掛ける。

こうした関係機関が被災者に同じことを重複して質問しないよう、共通して使える調査票のひな型も新たに作った。車中泊については、あらかじめ駐車スペースを決めておき、災害時に誘導するよう自治体に求める。

3・11踏まえ努力義務

2013年6月に成立した改正災害対策基本法は、やむを得ない事情により避難所に滞在できない被災者にも生活物資を配ったり保健医療サービスを提供したりする努力義務を自治体に課した。

11年3月11日発生の東日本大震災で車中泊や在宅避難が多発したことを踏まえた改正だが、そうした取り組みを可能にするノウハウや人的な体制が整っていないことが今回、検討会が実施した調査で分かった。

新型コロナ下での豪雨災害で避難所の密を避ける必要に迫られたことからも、内閣府は避難所以外での避難生活の環境を整えることが不可欠と判断した。